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ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎の種類

① 概要

ウイルス性肝炎は、肝炎ウイルス(A〜E型)の感染により肝臓に炎症が生じる疾患。ウイルスの種類により感染経路・慢性化のしやすさ・ワクチンの有無が大きく異なる。経口感染(糞口感染)するA型・E型は急性肝炎のみで慢性化しないのに対し、血液・体液感染するB型・C型は慢性化しやすく、肝硬変・肝細胞癌へ進展しうる。D型はB型への重複・同時感染がないと増殖できない特殊なウイルス。

② 5つの肝炎ウイルスの比較

ウイルスの核酸主な感染経路慢性化ワクチン特記事項
A型(HAV)一本鎖RNA(ピコルナウイルス科)経口感染(糞口感染:汚染水・生カキ等)なし(急性のみ)あり予後良好。まれに劇症化
B型(HBV)部分二本鎖DNA(ヘパドナウイルス科)血液・体液感染(母子感染・性交渉・針刺し等)あり(成人感染は約5%、周産期感染は高率)ありcccDNAが残存し完全排除が困難。B型肝炎 参照
C型(HCV)一本鎖(+)RNA(フラビウイルス科)血液感染(輸血・針刺し・注射器共用等)あり(約70%と高率)なしDAA治療でSVR95%以上=ほぼ治癒可能。C型肝炎 参照
D型(HDV)一本鎖RNA(欠陥ウイルス)血液感染(HBVとの重複・同時感染が必須)HBV持続感染下で慢性化しやすい(HBVワクチンで間接的に予防可)HBs抗原を外殻に利用するため単独では増殖不能。日本では稀
E型(HEV)一本鎖RNA(ヘペウイルス科)経口感染(豚・イノシシ・シカ肉の生食、汚染水)通常なし(免疫抑制患者ではまれに慢性化)日本では未承認(中国では承認あり)人畜共通感染症。妊婦で劇症化しやすい

③ 各型の特徴(A型・D型・E型)

🔹 A型肝炎(HAV)
  • 汚染された水・食品(生カキ等の二枚貝)を介した糞口感染
  • 潜伏期は2〜6週間
  • 慢性化しない(一過性の急性感染)が、まれに劇症肝炎に至ることがある
  • 有効なワクチンがあり、流行地域への渡航前接種が推奨される
  • 特異的な抗ウイルス薬はなく、対症療法が基本
🔹 D型肝炎(HDV)
  • 欠陥(不完全)ウイルス:自身の外殻タンパク質を持たず、増殖にHBs抗原を利用する
  • そのためHBV感染がなければ感染・増殖できない
  • 同時感染(HBV+HDVを同時に感染)と重複感染(HBV持続感染者にHDVが後から感染)の2パターンがある
  • 重複感染では重症化・慢性化しやすい
  • HBVワクチンによる予防がHDV感染の予防にもつながる
  • 日本での感染例は少ない
🔹 E型肝炎(HEV)
  • 豚・イノシシ・シカなどの生肉・加熱不十分な肉や汚染水を介した経口感染(人畜共通感染症)
  • 多くは自然治癒する急性感染で、通常は慢性化しない
  • 免疫抑制状態(臓器移植後等)では慢性化する例が報告されている
  • 妊婦が感染すると劇症肝炎化しやすく、致死率が高いことが特徴
  • 国内では未承認だが、海外の一部地域ではワクチンが使用されている

④ 看護のポイント(観察事項)

  • 感染経路別の予防策
    • 経口感染型(A型・E型)→ 食品衛生・手指衛生の指導(生水・生肉・生カキ等の摂取回避)
    • 血液・体液感染型(B型・C型・D型)→ 標準予防策の徹底(針刺し事故防止、体液曝露時の対応)
  • ワクチン接種歴の確認:A型・B型はワクチンで予防可能 → 医療従事者・渡航者への接種状況を確認
  • 慢性化するタイプ(B型・C型)は、肝硬変・肝細胞癌への進展を見据えた長期的なフォローアップが必要
  • 妊婦のE型肝炎は劇症化リスクが高いため、流行地域への渡航歴・生肉摂取歴の聴取が重要
  • HBV再活性化リスク:既往感染者でも免疫抑制療法・化学療法時に注意(B型肝炎ページ参照)
  • 針刺し事故等の曝露時は、曝露源のウイルスタイプに応じた対応(HBIG・ワクチン、フォローアップ検査)が異なる点に注意

まとめ:

  • 経口感染・慢性化なし → A型・E型(食品衛生対策が中心)
  • 血液感染・慢性化しやすい → B型・C型(標準予防策・長期フォローが中心)
  • D型はB型がなければ増殖できない特殊な欠陥ウイルス
  • ワクチンがあるのはA型・B型のみ(国内承認ベース)
  • 慢性化した場合の治療方針は大きく異なる:B型は核酸アナログで抑制、C型はDAAで排除(cure)可能