錐体外路症状

副作用の機序

錐体外路症状の原因となる可能性がある薬剤について

ドパミン神経系に作用するため

ドパミン D 受容体遮断薬:黒質線条体のドパミン神経系を抑制することで、運動過少、運動過多の不随意運動である錐体外路症状を呈する可能性がある
  • 111全身麻酔剤:ドロペリドール
  • 117精神神経用剤:抗精神病薬
  • 232消化性潰瘍用剤:スルピリド
  • 239その他の消化器官用剤:ドンペリドン、メトクロプラミド、プリンペラン、イトプリド

アセチルコリン神経系を介してドパミン神経系に影響

アセチルコリン作動薬:ACh とドパミンは逆の関係にあるため、ACh 作動薬の影響でドパミン神経系は抑制されるため、脳内の ACh 作用を増強する薬剤は、薬剤性錐体外路症状を引き起こす可能性がある
  • 119その他の中枢神経系用剤:AChE阻害薬

セロトニン神経系を介してドパミン神経系に影響

5-HT受容体刺激:5-HT受容体は黒質および線条体でのドパミン遊離を抑制することが知られている。5-HT を増加させ、5-HT受容体を刺激することは、錐体外路症状を引き起こす可能性がある
  • 117精神神経用剤:抗うつ薬
  • 117精神神経用剤:リチウム

その他

  • 抗てんかん薬:他の抗精神病薬と比較するとまれ(リスクは低い)だが、抗てんかん薬でも、錐体外路症状が起こる可能性があると示唆されている [1]
    • レベチラセタム、ラモトリギン
    • バルプロ酸ナトリウム、フェニトイン
    • 他にも、カルバマゼピン
  • カルシウム拮抗薬 [1]

ガイドラインにおける記載

各ガイドラインでは、薬剤のリスクについて、どのような記載がされているのか
詳細は各ガイドラインを参照

「高齢者の安全な薬物治療ガイドライン2015」

CQ. BPSD に対して抗精神病薬を使用する場合の注意点は?

A. 抗精神病薬の使用は必要最低限の量と期間にとどめる(エビデンスの質:中、推奨度:強)。 定型抗精神病薬は、非定型抗精神病薬と比べて錐体外路症状、傾眠などの副作用が多く見られるため使用はできるだけ控える(エビデンスの質:中、推奨度:強)。
CQ. 高齢者のうつ病に対する抗うつ薬使用上の注意点は?

A. 三環系抗うつ薬は、他の薬剤に比べて抗コリン作用が強いため高齢発症のうつ病に対して特に慎重に使用するべきである(エビデンスの質:高、推奨度:強)。 SSRI も高齢者に対して転倒や消化管出血などのリスクがあり、これらのハイリスク群に対する使用には特に注意が必要である(エビデンスの質:中、推奨度:強)。 スルピリドは、錐体外路症状が発現しやすいため可能な限り使用を控えるべきである(エビデンスの質:低、推奨度:強)。

パーキンソン病診療ガイドライン2018

Q&A 2-3 パーキンソニズムを出現・悪化させる薬物は何か?

A. ドパミン受容体遮断効果を持つ抗精神病薬やスルピリド、ドパミン枯渇薬はパーキンソニズムを出現、悪化させることがある。 コリンエステラーゼ阻害薬、SSRI、カルシウムチャネル阻害薬などもパーキンソニズムを出現、悪化させることがある
  1. 治療
a. 薬剤性パーキンソニズム
原因薬の中止が望まれる。中止困難であれば、ドパミン受容体遮断効果のより低い同効薬に変更する。精神症状が強く、中止も変更も困難であれば、抗コリン薬を併用する。
b. パーキンソン病の症状が悪化した場合
未発症のパーキンソン病が顕在化したか、既知のパーキンソニズムが悪化した場合も、原因薬の中止、変更を試みる。精神症状が強い場合は、まず抗精神病薬で鎮静・改善を図り、意思疎通性が回復した後、錐体外路症状をより生じにくい薬物に変更することがある。
 
 

原因薬剤

「多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド」に記載されている原因薬剤一覧

○ 銘柄名ごと

錐体外路症状に影響する薬剤一覧/銘柄名ごと2024/12/25 0:102024/12/25 0:12
 

○ 一般名ごと

 
[1] 厚生労働省:「重篤副作用疾患別対応マニュアル:薬剤性パーキンソニズム」