2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)

 

2型糖尿病の薬物治療のアルゴリズム

インスリンの絶対的・相対的適応

2型糖尿病の薬物治療について、安全性を大前提として、まず、インスリンの適応が確認される。

インスリンの絶対的適応

①インスリン依存状態
②高血糖性の昏睡(糖尿病性毛とアシドーシス、高浸透圧性高血糖状態)
③重度の肝障害・腎障害を合併しているとき、重症感染症、外傷、中等度以上の外科手術(全身麻酔施行例など)のとき
④糖尿病合併妊婦(妊娠糖尿病で、食事療法だけでは良好な血糖コントロールが得られない場合も含む)
⑤静脈栄養時の血糖コントロール

インスリンの相対的適応

①インスリン非依存状態の例でも、著名な高血糖(例えば、空腹時血糖値 250 mg/dL 以上、随時血糖値 350 mg/dL 以上)を認める場合
②経口薬療法のみでは良好な血糖コントロールが得られない場合
③やせ型で栄養状態が低下している場合
④ステロイド治療時に高血糖を認める場合
⑤糖毒性を積極的に解除する場合
 

目標 HcA1c 値の決定

「熊本宣言2013」および「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」をもとに、目標 HbA1c 値を決定する。
熊本宣言2013
  • 合併症予防の観点からの目標:【HbA1c の目標値】7% 未満
  • より厳格な目標を目指せる症例:【HbA1c の目標値】6% 未満
  • 厳格な管理が困難な症例(低血糖リスクが高い症例など):【HbA1c の目標値】8% 未満
熊本スタディ P:2型糖尿病患者に対して I:強化療法(厳格に血糖をコントロール)は、 C:従来法と比較して O:糖尿病による血管合併症の発症・進展を抑制できるか? 対象:2型糖尿病患者(登録期間1987-1988年、追跡期間6年) 【一次予防】対象:2型糖尿病・網膜症なし・腎症なし 【二次介入群】対象:2型糖尿病・単純網膜症あり・腎症なし →血糖コントロールが良好に保たれ、合併症も抑制された https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7587918/
高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)
  • 高齢者では、心身機能の個人差が著しい
    • 患者の特徴や健康状態(年齢、認知機能、身体機能(基本的 ADL や手段的 ADL)、併発疾患、重症低血糖のリスク、余命など)を考慮して個別に設定する
    • 患者中心の個別性を重視した治療を行う観点から、目標値を下回る設定や上回る設定を柔軟に行うことを可能とした
  • 高齢糖尿病では重症低血糖をきたしやすい。重症低血糖は、認知機能を障害するとともに、心血管イベントのリスクになり得る
    • 重症低血糖が危惧される場合は、目標下限値を設定し、より安全な治療を行うこと
(高齢者糖尿病の血糖コントロール目標 http://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?content_id=66
 

Step 1:病態に応じた薬剤選択

  • インスリン分泌不全およびインスリン抵抗性の評価
    • インスリン分泌能
      • インスリン 分 泌 指 数(II,insulin ogenic index)
      • C-peptide index
    • インスリン抵抗性
      • HOMA-IR
↓(全例で評価するのは困難であるため、2 型糖尿病の病態をある程度判別できる臨床指標として、肥満の有無)
  • 肥満(インスリン抵抗性を想定)
    • 指標
      • Body mass index(BMI)25 kg/m2 以上
      • ウエスト周囲長:男性 85 cm 以上,女性 90 cm 以上
    • 薬剤例
      • インスリン分泌非促進系:
        • ビグアナイド薬
        • SGLT2 阻害薬
        • チアゾリジン薬
        • α-GI・・食後高血糖改善
        • チルゼパチド
      • インスリン分泌促進系薬剤:
        • GLP-1 受容体作動薬・・体重減少効果が期待できる
        • イメグリミン・・インスリン抵抗性改善作用を併せ持つ
  • 非肥満(インスリン分泌不全)
    • 薬剤
      • インスリン分泌促進系薬剤
        • DPP-4 阻害薬
        • スルホニル尿素(SU)薬・・低血糖
        • グリニド薬・α-グルコシダーゼ阻害薬・・食後高血糖改善
        • ビグアナイド薬
          • メトホルミン・・日本人において非肥満においても肥満と同程度のHbA1c 低下作用を示す
        • GLP-1受容体作動薬・SGLT2 阻害薬・・痩せの症例に使用する場合には、サルコペニアやフレイルに注意

Step 2:安全性への配慮

  • 低血糖リスク
    • SU 薬
    • グリニド薬
  • 体重への影響
  • 腎機能障害合併例
  • 肝機能障害
  • 心血管系
 

Step 3:Additional‌ benefits を考慮すべき併存疾患

  • 心血管疾患
    • 心血管疾患を合併した 2 型糖尿病:SGLT2阻害薬,次いで GLP-1 受容体作動薬が推奨度が高い
  • 心不全
    • 糖尿病患者は症状がなくても,将来の心不全のリスクが高い「前心不全状態」と考えられている
    • 心不全合併 2 型糖尿病においては,SGLT2 阻害薬が第一選択
    • GLP-1 受容体作動薬は有用性が期待されているが、現時点ではエビデンス不足
  • 慢性腎臓病(特に顕性腎症)
    • アルブミン尿(特に顕性腎症期相当)
      • 血糖降下作用にかかわらず SGLT2 阻害薬を第一選択薬
      • 第2選択薬:GLP-1 受容体作動薬
    • 非アルブミン尿
      • SGLT2 阻害薬またはGLP-1 受容体
    • 高度腎機能障害(eGFR 20 mL/分/1.73 m2 未満)を合併した糖尿病症例
      • SGLT2 阻害薬の腎保護効果は明らかでなく,また糖尿病薬としての効果も期待できない
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)・・本改訂から取り上げた
    • 2 型糖尿病にしばしば合併する
    • 日本消化器病学会・日本肝臓学会 NAFLD/NASH 診療ガイドライン 2020(改訂第 2 版)
      • チアゾリジン薬の投与推奨
      • SGLT2 阻害薬・GLP-1 受容体作動薬の投与提案
    • GLP-1 受容体作動薬セマグルチド・・肝線維化の悪化を伴わない NASH の組織学的な改善効果
    • GLP-1/GIP 受容体作動薬チルゼパチド・・高用量では NAFLD(NASH)の肝脂肪化や炎症細胞浸潤,風船様腫大を軽減できるとされる体重減少率 7 %以上を達成できる可能性がある

Step 4:考慮すべき患者背景

  • 服薬遵守率
  • 医療費
 
詳細は、原著を参照
2024/07/14 「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」を改訂しました