GLP-1 受容体作動薬
GLP-1 受容体作動薬
特長:
- 血糖値に依存して食後のインスリン分泌を促進する
- グルカゴン分泌を抑制する
→ 空腹時・食後高血糖を低下させる
作用機序
インクレチン
食事に伴い、消化管から分泌され、膵臓に作用してグルコース誘発インスリン分泌を促進するホルモンを、インクレチンという
- GIP, グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド

GLP-1受容体作動薬
GIP/GLP-1受容体作動薬
GLP-1, Gulcagon-Like peptide-1
グルカゴン様ペプチドー1
・・小腸から分泌されるインクレチン(インスリン分泌促進ホルモン)
GLP-1 は、食事をとって血糖値が上がると、小腸にあるL細胞から分泌され、すい臓のβ細胞表面にあるGLP-1受容体に結合し、β細胞内からのインスリンを分泌を促進する
GLP-1受容体作動薬は、GLP-1受容体に結合し、β細胞内からのインスリンを分泌を促進する
これと同時に、グルカゴン分泌(血糖値を上昇させる)を抑制する
薬剤名
GLP-1 受容体作動薬/経口
セマグルチド(遺伝子組換え)
4. 効能又は効果 2型糖尿病5. 効能又は効果に関連する注意本剤の適用は、あらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行ったうえで効果が不十分な場合に限り考慮すること。6. 用法及び用量通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として1日1回7mgを維持用量とし経口投与する。ただし、1日1回3mgから開始し、4週間以上投与した後、1日1回7mgに増量する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、1日1回7mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、1日1回14mgに増量することができる。7. 用法及び用量に関連する注意7.1 本剤の吸収は胃の内容物により低下することから、本剤は、1日のうちの最初の食事又は飲水の前に、空腹の状態でコップ約半分の水(約120mL以下)とともに3mg錠、7mg錠又は14mg錠を1錠服用すること。また、服用時及び服用後少なくとも30分は、飲食及び他の薬剤の経口摂取を避けること。分割・粉砕及びかみ砕いて服用してはならない。[16.2.1 参照][16.2.2 参照][16.2.3 参照]
7.2 本剤14mgを投与する際には、本剤の7mg錠を2錠投与することは避けること。[16.2.1 参照]
7.3 投与を忘れた場合はその日は投与せず、翌日投与すること。
GLP-1 受容体作動薬/注射
リラグルチド(遺伝子組換え)
4. 効能又は効果 2型糖尿病5. 効能又は効果に関連する注意本剤の適用はあらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行ったうえで効果が不十分な場合に限り考慮すること。6. 用法及び用量通常、成人には、リラグルチド(遺伝子組換え)として、0.9mgを維持用量とし、1日1回朝又は夕に皮下注射する。ただし、1日1回0.3mgから開始し、1週間以上の間隔で0.3mgずつ増量する。なお、患者の状態に応じて適宜増減し、1日0.9mgで効果不十分な場合には、1週間以上の間隔で0.3mgずつ最高1.8mgまで増量できる。7. 用法及び用量に関連する注意7.1 本剤は、1日1回朝又は夕に投与するが、投与は可能な限り同じ時刻に行うこと。 7.2 胃腸障害の発現を軽減するため、低用量より投与を開始し、用量の漸増を行うこと。良好な忍容性が得られない患者では減量を考慮し、さらに症状が持続する場合は、休薬を考慮すること。1~2日間の減量又は休薬で症状が消失すれば、減量前又は休薬前の用量の投与を再開できる。
エキセナチド
4. 効能又は効果 2型糖尿病 ただし、食事療法・運動療法に加えてスルホニルウレア剤(ビグアナイド系薬剤又はチアゾリジン系薬剤との併用を含む)を使用しても十分な効果が得られない場合に限る。5. 効能又は効果に関連する注意本剤は、食事療法・運動療法に加えてスルホニルウレア剤単独療法、スルホニルウレア剤とビグアナイド系薬剤の併用療法、又はスルホニルウレア剤とチアゾリジン系薬剤の併用療法を行っても十分な効果が得られない場合に限り適用を考慮すること。本剤の単独療法に関する有効性及び安全性は確立していない。6. 用法及び用量通常、成人には、エキセナチドとして、1回5µgを1日2回朝夕食前に皮下注射する。投与開始から1ヵ月以上の経過観察後、患者の状態に応じて1回10µg、1日2回投与に増量できる。7. 用法及び用量に関連する注意7.1 本剤の投与は原則として朝夕食前60分以内に行い、食後の投与は行わないこと。 7.2 本剤の投与は1回5µg、1日2回より開始すること。1回5µgから10µgに増量した後に、低血糖や胃腸障害が増加する傾向が認められているため、少なくとも投与開始から1ヵ月以上経過観察を行い、また、有効性と安全性を考慮して、1回10µg、1日2回への増量の可否を慎重に判断すること。
デュラグルチド(遺伝子組換え)
4. 効能又は効果 2型糖尿病5. 効能又は効果に関連する注意本剤の適用は、あらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行った上で効果が不十分な場合に限り考慮すること。6. 用法及び用量通常、成人には、デュラグルチド(遺伝子組換え)として、0.75mgを週に1回、皮下注射する。なお、患者の状態に応じて1.5mgを週に1回投与に増量できる。7. 用法及び用量に関連する注意7.1 本剤は週1回投与する薬剤であり、同一曜日に投与させること。 7.2 投与を忘れた場合は、次回投与までの期間が3日間(72時間)以上であれば、気づいた時点で直ちに投与し、その後はあらかじめ定めた曜日に投与すること。次回投与までの期間が3日間(72時間)未満であれば投与せず、次のあらかじめ定めた曜日に投与すること。なお、週1回投与の曜日を変更する必要がある場合は、前回投与から少なくとも3日間(72時間)以上間隔を空けること。
セマグルチド(遺伝子組換え)
4. 効能又は効果 2型糖尿病5. 効能又は効果に関連する注意本剤の適用は、あらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行ったうえで効果が不十分な場合に限り考慮すること。6. 用法及び用量通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として週1回0.5mgを維持用量とし、皮下注射する。ただし、週1回0.25mgから開始し、4週間投与した後、週1回0.5mgに増量する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回0.5mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、週1回1.0mgまで増量することができる。7. 用法及び用量に関連する注意7.1 本剤は週1回投与する薬剤であり、同一曜日に投与させること。 7.2 投与を忘れた場合は、次回投与までの期間が2日間(48時間)以上であれば、気づいた時点で直ちに投与し、その後はあらかじめ定めた曜日に投与すること。次回投与までの期間が2日間(48時間)未満であれば投与せず、次のあらかじめ定めた曜日に投与すること。なお、週1回投与の定めた曜日を変更する必要がある場合は、前回投与から少なくとも2日間(48時間)以上間隔を空けること。
同じ有効成分だが、適応症が異なる
- ウゴービ® (肥満症治療薬)
- オゼンピック® (2型糖尿病治療薬)
GIP/GLP-1受容体作動薬/注射
チルゼパチド
4. 効能又は効果 2型糖尿病5. 効能又は効果に関連する注意本剤の適用は、あらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行った上で効果が不十分な場合に限り考慮すること。6. 用法及び用量通常、成人には、チルゼパチドとして週1回5mgを維持用量とし、皮下注射する。ただし、週1回2.5mgから開始し、4週間投与した後、週1回5mgに増量する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回5mgで効果不十分な場合は、4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量できる。ただし、最大用量は週1回15mgまでとする。7. 用法及び用量に関連する注意7.1 本剤は週1回投与する薬剤であり、同一曜日に投与させること。 7.2 投与を忘れた場合は、次回投与までの期間が3日間(72時間)以上であれば、気づいた時点で直ちに投与し、その後はあらかじめ定めた曜日に投与すること。次回投与までの期間が3日間(72時間)未満であれば投与せず、次のあらかじめ定めた曜日に投与すること。なお、週1回投与の曜日を変更する必要がある場合は、前回投与から少なくとも3日間(72時間)以上間隔を空けること。 7.3 胃腸障害等の発現により忍容性が得られない患者では減量又は漸増の延期を考慮すること。 7.4 本剤投与による用量依存的な体重減少が認められているため、血糖コントロールだけでなく、体重減少にも注意し、本剤の増量の必要性を慎重に判断すること。[9.8 参照]
ビクトーザ皮下注
(1日1回、毎日)

バイエッタ皮下注
(1日2回、毎日)

トルリシティ皮下注
(週1回)

オゼンピック皮下注
(週1回)

マンジャロ皮下注
(週1回)

有効性
- 2型糖尿病患者の大血管症の進行抑制に有効
- 2型糖尿病患者の腎症の進行抑制に有効
糖尿病性腎疾患(DKD)
Additional effect
心血管保護効果:心血管疾患(CVD)のリスクを低下させる
- 主要な心血管イベント(MACE)の減少、心血管および全死因死亡率の低下
- 血圧や血中脂質レベルを下げ、動脈硬化のリスクを減少させる
腎保護効果
- マクロアルブミン尿を減少させ、腎機能の悪化を抑制
- 糖尿病性腎症の進行を遅らせる
体重減少と脂肪減少
- 胃の排出を遅らせ、食欲を抑制する
- 食欲抑制を通じて体重を減少させ、内臓脂肪および肝臓脂肪を減少させる
神経保護効果
- 神経炎症の軽減や神経成長の促進など
- アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患に対する潜在的な保護効果が研究されている
肝機能
- 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の改善に寄与する可能性がある
抗炎症作用
- 全身の慢性炎症を軽減する効果が示唆されている。
骨代謝への影響
- 骨密度の維持や骨折リスクの低減に寄与する可能性がある
筋肉への影響
- 筋肉萎縮の改善
- 筋肉の萎縮を防ぎ、筋肉量と機能を向上させることが示されている
- https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31020810/
- https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39125786/
- https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35775116/
- 特に、GLP-1RAsは筋肉細胞のインスリン抵抗性や酸化ストレスを軽減し、細胞の老化を防ぐことで、筋肉の質を改善
- 筋肉の代謝と血流
- 筋肉の微小血管の血流を増加させ、筋肉細胞への酸素や栄養素の供給を改善する
- これにより、筋肉の代謝が向上し、インスリン感受性が改善される
- 炎症と細胞死の抑制
- 筋肉の炎症を抑制し、細胞死を防ぐことで、筋肉の健康を維持する
- これにより、筋肉の強度と機能が保持されます。
- 体組成への影響
- GLP-1RAsは体脂肪を減少させる一方で、筋肉量の減少も観察されているが、全体的な筋肉の質は維持されていると報告されている
飲酒との関連
- アルコール摂取を減少させる可能性があることが示されている
- アルコール依存症の治療に役立つ可能性が期待されている
その他
- 脂質代謝の調節や脂肪沈着の減少
代表的な副作用
消化器症状
吐き気、嘔吐、下痢、便秘など
対策:低用量から投与を開始し、漸増する
🚩体重変化に注意(急激に体重変化する例がある)

注意すべき患者背景:
大腸がん・胃がんの家族歴、50歳以上、鉄欠乏性貧血、夜間症状、体重減少、消化管出血、持続的嘔吐、触知可能な心窩部腫瘤、嚥下障害
急性膵炎
無作為化臨床試験では、急性膵炎のリスクがわずかに上昇することが指摘されていた
エビデンスが蓄積され、ガイドラインでは、急性膵炎の発症リスクの増加については否定的、とされている
特徴
作用時間
- 短時間作用型:毎日
- 長時間作用型:週1回
投与経路
- 経口投与
- 皮下注射
投薬忘れ
- 週1回製剤の場合:
次回投与までの期間が 3日間(72時間)以上であれば、気づいた時点で直ちに投与し、その後はあらかじめ定めた曜日に投与する

次回投与までの期間が 2日間(48時間)以上であれば、気づいた時点で直ちに投与し、その後はあらかじめ定めた曜日に投与する

服薬時の注意点
服薬前後30分は飲食を避ける
生活面からみた薬剤
| 食 事 | 排 泄 | 睡 眠 | 運 動 | 認知機能 |
運動
低体重
体重減少の可能性はあるが、筋肉の質が改善し、筋力や機能の低下リスクは最小限であると考えられる。 ただし、高齢者やプレフレイルの患者ではサルコペニアのリスクがあるため、適切な患者選択が重要
P(Patient / Population / Problem)
・GLP-1受容体作動薬(GLP-1 RAs)による体重減少を経験している患者
・特に筋肉量、筋肉の組成、機能への影響が懸念される集団(高齢者、フレイル傾向のある人を含む)
I(Intervention)
・GLP-1受容体作動薬(GLP-1 RAs)およびその併用療法による体重減少
C(Comparison)
・体重減少を伴う他の治療法(例:外科的治療)
・GLP-1 RAsを使用しない群
O(Outcome)
・筋肉量や筋肉の質の変化(MRIによる測定を含む)
・インスリン感受性の改善、筋内脂肪の減少
・筋力や機能低下のリスク
・筋肉量を維持・改善するための新たな薬剤の開発状況
結論
GLP-1 RAsによる筋肉の変化は適応的(adaptive)であり、年齢や疾患状態、体重減少の程度を考慮すると、筋肉の質が改善し、筋力や機能の低下リスクは最小限であると考えられる。ただし、高齢者やプレフレイルの患者ではサルコペニアのリスクがあるため、適切な患者選択が重要。将来的には筋肉の健康を総合的に評価する手法が求められる。
過体重
骨の健康に及ぼす影響はまだ明確ではない
P(Patient / Population / Problem)
・肥満(PwO:People living with Obesity)の患者
・GLP-1受容体作動薬(GLP-1RAs)による体重管理を行っている人
・骨代謝および骨の健康への影響が懸念される集団
I(Intervention)
・GLP-1受容体作動薬(GLP-1RAs:リラグルチド、セマグルチド)を用いた慢性的な体重管理
C(Comparison)
・カロリー制限による体重減少
・減量手術(特に吸収不良を伴う手術)
・GLP-1RAsを使用しない群
O(Outcome)
・骨代謝の変化(骨密度、骨微細構造、骨強度など)
・体重減少に伴う骨の健康への影響(骨密度低下、骨折リスクの増加)
・GLP-1RAsが骨代謝に与える影響の評価(前臨床および臨床データ)
・GLP-1、GIP、グルカゴンのデュアル・トリプルアゴニストの骨への影響
結論
GLP-1RAsが骨の健康に及ぼす影響はまだ明確ではない。減量手術では骨密度の低下や骨折リスクの増加が報告されているが、リラグルチドは動物モデルで骨の性質を改善する可能性が示唆されている。ただし、ヒトでの有効濃度は肥満治療で用いられる用量よりも高い。セマグルチドの前臨床データは不十分。多くの既存研究は糖尿病患者を対象とし、骨の健康を主要評価項目としていないため、長期的な影響を明らかにするためのさらなる研究が必要。
運動を組み合わせることで骨の健康が維持できたという報告がある
P(Patient / Population / Problem)
・18~65歳の肥満(BMI 32-43)の成人
・糖尿病のない対象者
・体重減少に伴う骨密度(BMD)低下の懸念
I(Intervention)
・GLP-1受容体作動薬(リラグルチド 3.0 mg/日)による治療
・中~高強度の運動プログラム
・リラグルチド+運動の併用療法
C(Comparison)
・プラセボ群(対照群)
・運動単独群 vs. リラグルチド単独群
O(Outcome)
・全体の体重減少量(プラセボ群:7.03 kg、運動群:11.19 kg、リラグルチド群:13.74 kg、併用群:16.88 kg)
・リラグルチド単独群では、運動単独群と比較して股関節および脊椎のBMDが有意に低下(股関節 -0.013 g/cm², P = .03;脊椎 -0.016 g/cm², P = .04)
・運動+リラグルチドの併用群では、プラセボ群と比較してBMDの低下が認められず、骨の健康が維持された
結論
・リラグルチド単独では体重減少とともに骨密度の低下が見られたが、運動を併用することで骨の健康を維持できた。
・GLP-1RAを用いた体重管理では、運動の併用が骨密度低下の予防に重要であることが示唆された。