ポリファーマシー

ポリファーマシーとは?

定義

  • 多剤服用の中でも害をなすものを、特に、ポリファーマシーという
  • 明確な基準は国や文献によって異なりますが、一般的には 5剤以上の併用がポリファーマシーとされることが多い。(ただし、単に服用する薬剤数が多いことではないことに注意)

問題点

  • 副作用のリスクが増加(転倒、意識障害、腎機能障害など)
  • 薬物相互作用
  • 服薬アドヒアランスの低下(飲み忘れ・混乱)
  • 医療費の増大
 
ただし、必要な薬が適切に使われている場合は「適正な多剤併用」
 

不適切処方への介入

ポリファーマシー対策として、不適切処方への介入が重要である。不適切処方とは大きく二つに分類できる。
  • PIMs・・減らすべき薬
  • PPOs・・増やすべき薬
 

PIMs(Potentially Inappropriate Medications)

◾ 日本語訳:

「潜在的に不適切な薬物」

◾ 定義:

高齢者など特定の患者において、副作用やリスクがベネフィットを上回ると考えられる薬剤のこと。

◾ 例:

  • 高齢者に抗コリン作用を持つ薬(例:ジフェンヒドラミン)
  • 長期的なベンゾジアゼピン系薬の使用

◾ 使用場面:

  • 処方の見直し(deprescribing)の判断に利用される
  • 代表的な評価基準:Beers Criteria(米国)STOPP基準(欧州)、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015
 

PPOs(Potential Prescribing Omissions)

◾ 日本語訳:

「処方すべき薬剤の欠如」

◾ 定義:

医学的に必要な薬が処方されていない状態。

◾ 例:

  • 骨粗鬆症があるのにビタミンDやカルシウムが処方されていない
  • 心不全患者にACE阻害薬やβ遮断薬が処方されていない

◾ 使用場面:

  • 治療の不十分さを見直すため
  • 代表的な評価基準:START基準(欧州)
 
ポリファーマシーの評価では「減らすべき薬(PIMs)」と「足りない薬(PPOs)」の両方をチェックすることが大切
 

不適切処方に介入するための糸口

Beers 基準(ビアーズ)

STOPP/START criteria

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015

日本版抗コリン薬リスクスケール

 
 
 

処方カスケード

処方カスケード
処方カスケードの例
  • NSAIDs → 高血圧 → 降圧薬
    • NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を服用すると血圧が上昇することがある
    • 血圧上昇が副作用と認識されず、高血圧として新たに降圧薬が処方される
  • 利尿薬 → 高尿酸血症 → 痛風治療薬
    • 降圧剤として利尿薬を服用すると尿酸値が上昇する
    • 高尿酸血症を別の疾患と捉え、アロプリノールなどの痛風治療薬が追加される
  • 抗精神病薬 → パーキンソン症状 → 抗パーキンソン薬
    • 抗精神病薬の副作用として錐体外路症状(振戦、筋強剛など)が出現
    • これをパーキンソン病と捉え、抗パーキンソン薬が処方される
  • Ca拮抗薬 → 下肢浮腫 → 利尿薬
    • Ca拮抗薬の副作用として下肢浮腫が現れる
    • 浮腫に対して利尿薬が処方される
  • 抗コリン薬 → 便秘 → 下剤
    • 抗コリン作用を持つ薬剤(三環系抗うつ薬など)による便秘
    • 便秘に対して下剤が処方される
  • メトクロプラミド → アカシジア → ベンゾジアゼピン系薬
    • 制吐剤メトクロプラミドの副作用としてアカシジア(静座不能症)が出現
    • 不安症状と誤認され、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬が処方される
  • コリンエステラーゼ阻害薬 → 尿失禁 → 抗コリン薬
    • 認知症治療薬のコリンエステラーゼ阻害薬による尿失禁
    • 尿失禁に抗コリン薬が処方されるが、これは認知機能を悪化させる可能性がある
 
STOPP/START2025/4/2 12:172025/4/1 12:14STOPP/START ver.比較2025/4/2 22:252025/4/4 13:03Beers criteria2025/4/4 20:262025/4/4 13:17STOPP/START criteria2025/4/1 10:582025/4/1 10:59