小児薬用量換算式の比較

小児薬用量換算式の比較

乳児〜幼児

 
  • 乳児の身体計測値(身長・体重)
「平成22年度乳幼児身体発育調査」(厚生労働省)のデータを参照
月齢:「1月〜2月」の計測値を、月齢2月、というように記載
身体計測値:50パーセンタイル値を使用
 

乳児〜小児の薬用量

乳児〜小児に適用される複数の換算式を用いて算出した薬用量を比較した。
計算に使用する身体計測値は、「平成22年度乳幼児身体発育調査」(厚生労働省)の乳児の身体計測値(男児)を使用した。
  • 小児薬用量換算式
    • Fried 式(1歳未満の乳児)
    • Augsberger Ⅰ式(満1歳以上)
    • AugsbergerⅡ式(満1歳以上)
    • von Harnack の換算表
    •  
成人薬用量を1としたときのパーセント値として、グラフにプロットした。
参考値として、換算式の適用外の月例の値もプロットしている。
 
【結果】
1歳未満
1歳未満に適用されるのは、Fried 式とvon Harnack の換算表の二つ。Fried 式の方が、低用量が算出されることがわかる。
Augsberger式は適用外であるが、算出したところ、高値が算出されており、換算式を適用することは不適切であることがわかる。
1歳以上
1歳以上に適用されるのは、Augsberger Ⅰ式、Augsberger Ⅱ式、von Harnack の換算表の3つ。
Augsberger 式を比較すると、月齢が上がるほど、Ⅰ式よりも、Ⅱ式のほうが、高用量算出されることがわかる。
von Harnack の換算表は、Augsberger 式をもとに、作成されたものであり、Augsberger 式に沿って、過剰量とならないように作成されていることが見てわかる。
1歳未満に適用されるFried 式とは、用量が大きく異なる。成長に伴い連続的に使用する際、1歳未満ではFried 式で計算していた場合、1歳以上の換算式では用量が急増するため、個別の調整が必要である。
 

乳児〜小児の体表面積

薬用量を算出するために、体表面積を用いる場合がある。体表面積を算出するためには、藤本の式とDuBois式がある。「平成22年度乳幼児身体発育調査」(厚生労働省)の乳児の身体計測値(男児)を元に、換算式の計算結果を比較した。
  • 体表面積
    • 藤本の式・乳児期(0歳台):グラフ中には①と記載
    • 藤本の式・幼児期(1〜5歳台):グラフ中には②と記載
    • DuBois 式
 
国民健康・栄養調査(2019年)の、20歳以上・男性の身体計測値(167.7cm, 67.4kg)を用いて算出した成人体表面積を1としたときの比として、乳児〜幼児の体表面積を算出した。
 
【結果】
5歳までは、藤本式と比較して、DuBois 式の方が低値が算出された。なお、これは [1] と一致。
 

乳児〜小児の薬用量換算式の比較

小児薬用量換算式を用いて小児薬用量を算出した場合と、体表面積比から小児薬用量を算出した場合の違いを比較するために、同一グラフにプロットした。
小児薬用量を成人に対する比をプロットした。
 
【結果】
大まかな傾向として、
  • 藤本式の体表面積の比で算出した小児薬用量
  • DuBois式の体表面積の比で算出した小児薬用量≒Augsberger Ⅱ 式で算出した小児薬用量
  • Augsberger Ⅰ 式で算出した小児薬用量
  • von Harnack の換算表で算出した小児薬用量
  • 体重比から算出した小児薬用量
この順番で薬用量が多い結果となった。
 
なお、体重比については、参考値として、同一グラフにプロットした。成人体重を1としたときの比としたときの、乳児〜小児の体重比を見ると、体表面積比よりも小さく、単純に体重比として薬用量を算出すると、過小投与につながる可能性があることがわかる。
 

小児

小児の薬用量換算式の比較

2歳から15歳までに適用される各種換算式を用いて算出した薬用量を比較した。
身体計測値は、令和元年度国民健康・栄養調査から、男性の値を参照した。
 
  • 小児薬用量換算式
    • Young の式(2歳以上)
    • Clark の式(2歳以上)
    • Augsberger Ⅰ式(満1歳以上)
    • AugsbergerⅡ式(満1歳以上)
    • Lenart の式
    • von Harnack の換算表
    • 中山の表
 
【結果】
Clark の式、Young の式は低値である。→現在は、あまり使用されていない
臨床で汎用される Augsberger Ⅱ式は、概ね、全換算式の中程度の値が算出される。
 
臨床では、疾患重篤度や身体機能を考慮したうえで、患者様個々の、その時の状態に応じて薬用量が決められるべきです。ここに示したのは、あくまでも、換算式の比較であり、「この通りにしなければならない」ことを示しているわけではありません。
 
[1] 森山 祐輔, 有森 和彦, 中野 眞汎, 小児の発育と体表面積を基にした小児薬用量の評価, 病院薬学, 1992, 18 巻, 3 号, p. 245-251, 公開日 2011/08/11, Online ISSN 2185-9477, Print ISSN 0389-9098, https://doi.org/10.5649/jjphcs1975.18.245, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs1975/18/3/18_3_245/_article/-char/ja
鈴木 信也, 佐藤 均, 小児の生理・生化学的発達と薬物消失経路を考慮した新たな小児薬用量推定法, 医療薬学, 2014, 40 巻, 12 号, p. 698-715, 公開日 2015/12/10, Online ISSN 1882-1499, Print ISSN 1346-342X, https://doi.org/10.5649/jjphcs.40.698, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs/40/12/40_698/_article/-char/ja
辻 泰弘, 小児の成熟度を考慮した薬物動態と抗菌化学療法, 日本環境感染学会誌, 2021, 36 巻, 2 号, p. 77-82,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsei/36/2/36_77/_pdf/-char/ja