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抗うつ薬

抗うつ薬

3ステップで理解する臨床薬理

1. どんな薬?

抗うつ薬は、うつ病や気分障害の治療に用いられる薬剤群で、脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンなど)のバランスを整え、気分や意欲を改善します。
 
モノアミン仮説:
セロトニン・ノルアドレナリン・ドパミンの不足機能低下がうつ症状に関与する
薬の作用:神経伝達物質を調整する
モノアミンの生理作用:
  • セロトニン(5-HT)…情動の安定、睡眠・食欲調整
  • ノルアドレナリン(NA)…覚醒・集中、意欲の喚起
  • ドパミン(DA)…快感・報酬系、運動調整
 

抗うつ薬の目的:

  • 気分の改善:落ち込みや意欲低下を和らげる
  • 再発予防:症状が再び悪化するのを防ぐ
  • 日常生活の支援:睡眠・食欲など生活リズムを整える
三環系抗うつ薬(TCAs)
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害。抗コリン作用やα遮断作用も併せ持つ
5-HT↑:落ち込みを和らげる、気分安定化
NA↑:意欲低下を和らげる、注意力を上げる
抗コリン作用:口渇、便秘、排尿困難など
α遮断作用:起立性低血圧
四環系抗うつ薬(TeCAs)
ノルアドレナリン再取り込み阻害
NA↑:意欲低下を和らげる、注意力を上げる
特徴:TCAsよりも、抗コリン作用が弱い
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
 
セロトニン再取り込みを阻害し、シナプス間のセロトニンのみを選択的に増やす
5-HT↑:落ち込みを和らげる、気分安定化
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
セロトニン・ノルアドレナリンを増やす
 
NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動薬)
α2受容体遮断+セロトニン作用増強
 
症状に応じた使い分け
5-HT↑:落ち込みを和らげる、気分安定化
NA↑:意欲低下を和らげる、注意力を上げる
副作用を考慮した使い分け
抗コリン作用:口渇、便秘、排尿困難など
α遮断作用:起立性低血圧
抗H遮断作用:眠気、鎮静
 
どの神経伝達物質に影響するか、各薬剤によって異なる→症状に応じた使い分けor副作用を考慮した使い分け
第一世代
  • 三環系抗うつ薬(TCA)
第二世代
  • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
  • セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
  • ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬(NDRI)
  • ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)
  • セロトニン調整薬(セロトニン再取り込み阻害+受容体調節)(SARI)
  • セロトニン多動作性抗うつ薬(SMI)

2. どんな使い方

  • うつ病・うつ状態
    • 抗うつ薬の適応の中心。軽症~重症まで幅広く使用。
  • 不安障害
    • パニック障害、社交不安障害、強迫性障害などにも有効なものがある。
  • 慢性疼痛・頭痛
    • 三環系やSNRIは神経障害性疼痛、線維筋痛症、片頭痛予防にも応用。
  • その他
    • PMS(月経前症候群)の心身症状改善
    • 摂食障害、PTSD(薬剤によっては保険適応外)
 

3. 注意点は? 観察・ケアのポイント

有害事象の観点から:
  1. 併用禁忌・相互作用
      • MAO阻害薬との併用禁止(セロトニン症候群の危険)
      • 抗コリン作用を持つ薬剤との併用で副作用増強
      • CYP酵素代謝による薬物相互作用に注意
  1. 主な副作用
      • 消化器症状:悪心、嘔吐、下痢
      • 中枢神経系:頭痛、めまい、眠気、不眠
      • 性機能障害:性欲減退、射精障害
      • 三環系特有:口渇、便秘、尿閉、起立性低血圧
  1. 禁忌・慎重投与
      • MAO阻害薬投与中または投与中止後2週間以内
      • 重篤な肝・腎障害、心疾患(特に三環系)
      • 自殺念慮のある患者:投与初期はリスク増大の可能性
 
観察・ケアのポイント
  • 効果発現までの期間
    • 多くは投与開始から 2~4週間 で効果が徐々に現れる
    • 初期は副作用のみ出現しやすいため、継続フォローが重要
  • 主な副作用
    • 消化器系:吐き気、下痢 → 食後投与で緩和
    • 中枢神経系:眠気、めまい → 転倒リスクに注意
    • 抗コリン作用(TCA):口渇、便秘、排尿困難
    • 性機能障害(SSRI/SNRI):性欲低下、遅発性射精
    • 血圧変動:起立性低血圧(特にTCA)
  • 自殺リスク評価
    • 投与初期は意欲が回復しきれず、衝動的自殺企図のリスク増加
    • 希死念慮や行動変化を定期的に観察・記録
  • 服薬アドヒアランス支援
    • 毎日同じ時間の服用習慣づけ
    • 副作用出現時も自己判断で中断せず、医師・薬剤師に相談
  • 生活指導・家族支援
    • 規則正しい生活リズムの維持(睡眠・食事・運動)
    • 家族へ薬の効果・副作用を説明し、サポート体制を整備