点眼剤
点眼剤
点眼剤とは、眼に直接適用する液状(または懸濁状)の無菌製剤のこと。主に局所作用を目的とする。
投与経路の特徴
| 点眼投与 | 参考:経口投与 | 参考:静脈投与 | |
|---|---|---|---|
| 投与部位 | 結膜嚢(下眼瞼と眼球の間) | 口腔→消化管 | 静脈内 |
| 作用の種類 | 主に局所作用(眼組織に直接到達) | 全身作用 | 全身作用 |
| 効果発現 | 数分〜数十分(局所効果) | 30分〜2時間 | 即時 |
| 全身への影響 | 少ないが、鼻涙管から吸収され全身性副作用を起こすことがある | 大きい | 最も大きい |
| 初回通過効果 | 受けない | 受ける | 受けない |
| 投与の簡便さ | 自己投与可能(患者自身で点眼) | 最も簡便 | 医療者による投与 |
点眼投与の利点
- 局所に高濃度の薬物を到達させられる → 少量で有効
- 全身性の副作用が少ない(経口投与や注射に比べて)
- 自己投与が可能で、外来通院で継続できる
- 非侵襲的で痛みが少ない
- 初回通過効果を受けない
点眼投与の欠点
- 結膜嚢の容量が小さい(約30 μL)→ 1滴(約50 μL)でもあふれる
- 涙液による希釈・流出で薬物の滞留時間が短い(約5分程度)
- 鼻涙管を通じた全身吸収により副作用が出ることがある
全身性副作用に注意が必要な点眼薬の例
- チモロール(チモプトール®):β遮断薬 → 鼻涙管から吸収され徐脈・気管支収縮 → 気管支喘息患者には禁忌
- 対策:点眼後に涙嚢部(目頭)を1〜5分間圧迫し、鼻涙管への流入を防ぐ
- 正確な点眼操作が必要(高齢者・小児は困難なことがある)
- 角膜のバリア機能により、薬物の眼内移行率は投与量の1〜5%程度と低い
点眼剤の特徴
基本的な要件
- 無菌製剤であること(眼は感染しやすい)
- 等張(涙液の浸透圧に近い)であることが望ましい
- pHは涙液に近い中性付近(pH 6〜8)が望ましい
- 異物・微粒子を含まないこと
点眼剤の種類
| 種類 | 特徴 | 例 |
|---|---|---|
| 水性点眼剤 | 最も一般的。水溶液として薬物を溶解 | 多くの抗菌薬・抗アレルギー薬点眼 |
| 懸濁性点眼剤 | 薬物が水に溶けにくいため、微粒子として懸濁。使用前に振り混ぜる | フルオロメトロン(フルメトロン®) |
| 油性点眼剤 | 油性基剤に薬物を溶解。滞留時間が長い | 一部の抗炎症薬 |
| ゲル化点眼剤 | 点眼後に眼表面でゲル化し、薬物の滞留時間を延長 | チモプトールXE® |
容器の種類
| 容器 | 特徴 | 使用場面 |
|---|---|---|
| マルチドーズ型(複数回使用) | 防腐剤(ベンザルコニウム塩化物等)を含む。開封後の使用期限あり(通常約1か月) | 日常的な継続使用 |
| ユニットドーズ型(1回使い切り) | 防腐剤フリー。1本ずつ個包装 | 防腐剤アレルギーのある患者、コンタクトレンズ使用者、手術前後 |
マルチドーズ型

ユニットドーズ型(UD)

防腐剤について
多くの点眼剤には防腐剤(ベンザルコニウム塩化物 等)が含まれている。
- 開封後の細菌汚染を防ぐために添加されている
- ただし、防腐剤は角膜上皮を障害する可能性がある
- ソフトコンタクトレンズは防腐剤を吸着するため、装着中の点眼は原則避ける(添付文書で確認)
使用期限・保管
- 開封後の使用期限:(医療用医薬品)通常約1か月(マルチドーズ型)、(OTC点眼薬)通常約3か月
- 遮光保存が必要なもの(例:ジクアス®、リパスジル点眼)がある
- 原則室温保存だが、一部は冷所保存が必要
なぜ保存期間が短いのか?
- 防腐剤無添加:細菌汚染を防ぐ保存剤が入っていないため、開封後の無菌状態を維持できない
- 薬物の安定性が低い:光・温度・空気により分解されやすい成分を含む
→ 患者への指導時に「開封日を記入する習慣」を伝えることが重要
正しい点眼方法
- 手を洗う(手指の細菌が点眼容器や眼に付着するのを防ぐ)
- 下眼瞼を軽く引き下げ、結膜嚢に1滴を滴下する
- 点眼後、静かにまぶたを閉じる(強くつぶらない)
- 涙嚢部(目頭)を1〜5分間軽く圧迫する → 鼻涙管への流出・全身吸収を防ぐ
- あふれた液は清潔なティッシュ等で拭き取る
複数の点眼薬を使用する場合
- 2種類以上の点眼薬を使用する場合は、5分以上の間隔をあけて点眼する
- 間隔をあけないと、先に点眼した薬が洗い流され、効果が減少する
- 懸濁性点眼剤・ゲル化点眼剤は、他の点眼薬の最後に点眼する(滞留時間が長く、後の点眼の吸収を妨げるため)
- 一般的な順番:水性点眼剤 → 懸濁性点眼剤 → ゲル化点眼剤 → 眼軟膏