口から投与する製剤/経口腔粘膜

口に入れるが、嚥下しない
作用部位効果発現
舌下錠全身作用 (血中に吸収されて効果を発揮する)内服より速い
バッカル錠全身作用 (血中に吸収されて効果を発揮する)ややゆっくり
ブコラム口腔用液全身作用 (頬粘膜から吸収)速い
トローチ局所作用

舌下錠

舌の下に薬剤を置き、口腔粘膜から直接吸収させる錠剤。

吸収経路と特徴

舌下投与(SL)経口投与(PO)
吸収経路口腔粘膜 → 血管 → 全身循環胃・小腸 → 門脈 → 肝臓 → 全身循環
初回通過効果なし(肝代謝を受けない)あり
効果発現速度速い(数分〜10分程度)遅い(30分〜1時間程度)
持続時間短い比較的長い
崩壊時間2分以内30分以内

メリット

  • 肝初回通過効果を回避 → バイオアベイラビリティが高い
  • 効果発現が速い → 発作時など緊急性のある場面に適する

代表的な薬剤

  • ニトログリセリン舌下錠(ニトロール錠):狭心症発作の寛解
  • アブストラル舌下錠(フェンタニルクエン酸塩フェンタニル ):がん患者における突出痛の鎮痛
  • 減感作療法

使用方法

  1. 舌の下に錠剤を置く
  1. 唾液で自然に溶けるのを待つ
⚠️
噛んだり飲み込んだりしない
吸収部位が消化管に変わり、初回通過効果を受けてしまうため効果発現が遅くなる。バイオアベイラビリティも低下する可能性がある。

服薬指導のポイント

  • 口腔内が乾いていると溶けにくい → 投与前にうがい等で口内を湿らせておく(高齢者)
  • 錠剤が溶けた後、一定時間は飲食を避ける
  • アブストラル舌下錠は吸湿性があり、使用直前にPTPシートから取り出す
 

バッカル錠

奥歯と頬の間(頬粘膜)に薬剤を置き、口腔粘膜から吸収させる錠剤。
  • 「バッカル」は「頬側の」という意味
  • 犬歯窩の粘膜に付着させる

舌下錠との比較

バッカル錠舌下錠
投与部位奥歯と頬の間(頬粘膜)舌の下(舌下粘膜)
吸収速度やや緩やか速い
初回通過効果回避回避
薬効の持続比較的長い短い
特徴粘膜付着性があり、ゆっくり溶解急速に崩壊・吸収

共通点

  • いずれも口腔粘膜から吸収肝初回通過効果を回避
  • バイオアベイラビリティが経口投与より高い

代表的な薬剤

  • イーフェン®バッカル錠(フェンタニルクエン酸塩):がん患者における突出痛の鎮痛
オラビ®錠口腔用(ミコナゾール付着錠):口腔咽頭カンジダ症治療剤

使用方法

  1. 奥歯と頬の間に錠剤を挟む
  1. 錠剤がゆっくり溶けるのを待つ
⚠️
噛んだり飲み込んだりしない
バッカル錠も舌下錠と同様、口腔粘膜からの吸収を目的とした製剤。噛み砕いたり飲み込むと、消化管吸収に切り替わり初回通過効果を受けてしまう。

看護師向け:観察事項

  • 口腔粘膜の状態(乾燥・炎症・潰瘍)を確認 → 吸収に影響する
  • 錠剤が正しい位置(頬と歯肉の間)に留まっているか確認
  • 嚥下困難のある患者では誤嚥に注意
 
フェンタニル クエン酸塩 剤形と血中濃度推移の違い
アブストラル 舌下錠
 
イーフェン バッカル錠
フェントス テープ
デュロテップMTパッチ
(3日ごとに貼り替え)
 
引用元)電子添文

経頬粘膜

薬剤例

ブコラム®口腔用液(ミダゾラム):てんかん重積状態の治療
  • ミダゾラム口腔用液<ベンゾジアゼピン系抗てんかん薬>

トローチ剤

口腔内でゆっくり溶かし、口腔・咽頭の局所に薬効を発揮させる製剤。

舌下錠・バッカル錠との違い

トローチ剤舌下錠・バッカル錠
目的局所作用(口腔・咽頭)全身作用(口腔粘膜から吸収)
吸収経路消化管からの吸収は期待しない口腔粘膜 → 全身循環
溶解速度ゆっくり(10〜30分かけて溶かす)舌下錠:2分以内 / バッカル錠:やや緩やか
初回通過効果関係なし(局所作用が主体)回避

特徴

  • 口腔・咽頭に局所的に殺菌・消炎・鎮痛効果を発揮
  • 有効成分が口腔内に長時間とどまるように設計されている
  • 中央に穴が空いた円盤状のものが多い(誤嚥時の気道確保のため)

代表的な薬剤

  • SPトローチ®(デカリニウム塩化物):口腔・咽頭の殺菌消毒
  • AZトローチ®(アズレンスルホン酸ナトリウム):口腔・咽頭の消炎
  • オラドールS®トローチ(ドミフェン臭化物):口腔内の殺菌消毒

使用方法

  1. 口腔内に入れ、噛まずにゆっくり溶かす
  1. 唾液とともに口腔・咽頭全体に薬効成分を行き渡らせる
⚠️
噛み砕いたり飲み込んだりしない
速く溶けてしまうと、口腔・咽頭に十分な濃度が維持できず局所効果が低下する。

服薬指導のポイント

  • 使用後30分程度は飲食を避ける → 有効成分が洗い流されるのを防ぐ
  • 小児や高齢者で誤嚥のリスクがある場合は注意が必要
  • 1日の使用回数・間隔を守る(漫然と使用しない)