甲状腺機能亢進症
看護師向け:観察・指導ポイント
🫀 バイタルサインの観察
- 脈拍(安静時頻脈の有無)・血圧(収縮期高血圧・脈圧増大)・体温
- 体重の定期測定(減少が続く場合は治療不十分の可能性)
📊 検査値のモニタリング
- FT₃・FT₄・TSHの推移を把握
- 血算(無顆粒球症の早期発見)・肝機能の定期確認
💊 服薬指導
- 自覚症状が改善しても自己中断しないよう繰り返し指導
- 抗甲状腺薬の副作用(無顆粒球症:発熱・咽頭痛)の初期症状を患者に説明
- 治療期間が通常1.5〜2年以上と長期であることを説明
🌡️ 甲状腺クリーゼの兆候観察
- 高熱・著しい頻脈・意識障害があれば直ちに医師に報告
🌿 生活指導
- 安静の確保(治療初期は適度な安静が必要)
- ストレス回避(精神的・身体的ストレスが症状を悪化)
- 十分な栄養摂取(代謝亢進による消耗増大)
- 眠前のカフェイン・刺激物を避ける(交感神経刺激の回避)
- 眼症状のケア(バセドウ病):人工涙液・就寝時の眼保護・禁煙指導(喫煙で眼症悪化)
特殊な薬の使い方:Block and Replace療法
抗甲状腺薬と甲状腺ホルモン薬の併用
概要
- 抗甲状腺薬(MMI等)を高用量のまま維持して甲状腺ホルモン合成を完全にブロック(Block)
- 同時にレボチロキシンナトリウム水和物(T₄)を補充して正常な甲状腺機能を維持(Replace)
通常の漸減療法(Titration法)との比較
| 漸減療法(Titration) | Block and Replace療法 | |
|---|---|---|
| 抗甲状腺薬 | FT₃・FT₄に応じて用量を漸減 | 高用量を維持(例:MMI 30mg/日) |
| レボチロキシン | 使用しない | 併用する(例:50〜100μg/日) |
| メリット | 副作用リスクが低い(低用量) | 甲状腺機能が安定しやすい、検査頻度を減らせる |
| デメリット | 用量調整に頻回な検査が必要 | 副作用リスク↑(抗甲状腺薬が高用量) |
| 寛解率 | 同等 | 同等(差なし) |
使用される場面
- 漸減療法で甲状腺機能が不安定な場合
- 頻回の通院・採血が困難な場合
- 日本では漸減療法が主流で、Block and Replaceは欧州で比較的多く用いられる
注意点
- 抗甲状腺薬が高用量のため、無顆粒球症などの副作用リスクが高くなる
- 寛解率に差がないため、日本のガイドラインでは漸減療法が推奨されている
- 妊娠中は併用禁忌(レボチロキシンは胎盤を通過しにくく、MMI高用量による胎児の甲状腺機能低下を補えない)