00|PIPCとは

00|PIPCsとは?

潜在的に不適切な処方カスケード

薬を開始したあとに有害事象が現れ、その症状が新たな疾患や症状として捉えられ、さらに別の薬が処方されることがある。
このような処方の連鎖を処方カスケード(prescribing cascade)という。

|処方カスケードの基本的な流れ

 
例えば、
といった処方の流れがある。
 

|PIPCとは?

処方カスケードが起きているからといって、すべてが不適切とは限らない。
原因となる薬を継続する必要があり、その有害事象に対して別の薬を追加することが適切な場合もある。
一方、
  • 起点となる薬を減量・変更・中止できる
  • 有害事象が薬によるものと認識されないまま治療薬が追加されている
  • 追加された薬によって、さらに有害事象が生じる可能性がある
などの場合には、処方全体を見直す余地がある。
このような処方カスケードを、潜在的に不適切な処方カスケード(Potentially Inappropriate Prescribing Cascades:PIPCs)という。

|国際専門家が65のPIPCを整理

2025年、老年医学・薬理学の国際専門家12名によるDelphi法を用いた研究が報告された。
既報から抽出された107の処方カスケード候補について検討し、
65の処方カスケードがPIPCとして合意された。
このリストは、特に高齢者の薬物療法を見直す際に、潜在的に不適切な処方の連鎖を発見するためのツールとして提案されている。

「処方薬 → 症状 → 併用薬」だけで判断しない

例えば、
という順序になっていても、それだけで「不適切」と判断することはできない。
 
処方を評価するときは、
① 症状は薬の開始・増量後に出現したか
② 起点薬の有害事象として説明できるか
③ 他の疾患や原因は考えられないか
④ 起点薬の減量・変更・中止は可能か
⑤ 併用薬による新たな不利益はないか
を確認する。
 

|処方歴を「前」にたどる

新しい薬が追加されたとき、

「この薬は、何に対して処方されたのか?」

を確認する。
さらに、

「その症状が出る前に、開始・増量された薬はないか?」

まで処方歴をさかのぼることで、処方カスケードに気づける可能性がある。

|このシリーズでは

2026年のBMJ研究では、高齢者で特に注意したい24のPIPCが整理された。[2]
このシリーズでは、その中から「処方薬 → 症状 → 追加薬」の流れを一つずつ取り上げ、薬剤レビューのポイントを紹介する。
併用薬を一律に「不要」と判断することが目的ではない。
症状の原因として薬剤を考え、起点となった薬を含めて処方全体を再評価することが重要である。
 

参考文献

[1] Rochon PA, et al. International expert panel's potentially inappropriate prescribing cascades (PIPC) list. Eur Geriatr Med. 2025;16(5):1573-1584. PMID: 40742670. 00|PIPCsとは?
[2] Rochon PA, Austin PC, Gurwitz JH, et al. Exploring high priority potentially inappropriate prescribing cascades in older adults: population level retrospective cohort study. BMJ. 2026;394:e100499. doi:10.1136/bmj-2026-100499. PMID: 42727946.
Rochon PA, O'Mahony D, Cherubini A, et al.
International expert panel’s potentially inappropriate prescribing cascades (PIPC) list.
Eur Geriatr Med. 2025;16(5):1573-1584.
doi:10.1007/s41999-025-01215-x. PMID: 40742670.
 

補足