00補足|2026年BMJ研究では、何が分かった?
00補足|2026年BMJ研究では、何が分かった?
65のPIPC候補を実臨床データで評価し、24件を高優先度として抽出
2025年の国際専門家Delphiで整理された65件の potentially inappropriate prescribing cascades(PIPCs)について、2026年のBMJ研究では、カナダ・オンタリオ州の大規模な高齢者データを用いて、どのPIPCを優先して確認すべきかが検討された。
重要なのは、この研究が「不適切処方を確定した研究」ではないことだ。起点薬の使用規模、処方組み合わせの発生頻度、起点薬→追加薬の時間的関連をもとに、集団レベルで優先順位を付けた研究である。
2|何を調べた?
各PIPCについて、3つの指標を評価した。
① 起点薬のpopulation prevalence
その起点薬が、高齢者集団でどのくらい使われているか
薬剤自体が広く使用されていれば、処方カスケードが生じた場合の集団への影響も大きくなる。
② prescribing cascade incidence
起点薬→追加薬という組み合わせが、どのくらい観察されたか
ただし、この数値は副作用の発生率ではない。
例えば、
鉄剤 → 下剤 11.9%
という結果は、
「鉄剤使用者の11.9%に鉄剤による便秘が起きた」
という意味ではない。
研究で定義された鉄剤→下剤という処方組み合わせのincidenceを示している。
③ adjusted sequence ratio(ASR)
起点薬→追加薬という順序が、逆の順序よりどのくらい多く観察されたか
処方順序の時間的な偏りを見る指標である。
したがって、
ASR 2.55=副作用リスクが2.55倍
ではない。
また、
ASRが高い=因果関係が証明された
という意味でもない。
Take Home
2026年BMJ研究では、65のPIPC候補を約230万人の高齢者の実臨床データで評価し、起点薬の使用規模、処方組み合わせの発生頻度、時間的関連の3条件から24件を高優先度として抽出した。これは不適切処方を断定するリストではなく、薬剤レビューや安全対策で優先して確認したい処方カスケードを示すものだ。
この資料の位置づけ
高優先度PIPCに該当する処方の組み合わせがあっても、それだけで不適切な処方とは判断できない。個々の患者の症状、病態、治療目的、起点薬・追加薬の必要性、他の原因等を確認し、処方全体を見直す際の参考情報として活用する。
参考文献
- Rochon PA, O'Mahony D, Cherubini A, et al. International expert panel's potentially inappropriate prescribing cascades (PIPC) list. Eur Geriatr Med. 2025;16(5):1573-1584.
- Rochon PA, Austin PC, Gurwitz JH, et al. Exploring high priority potentially inappropriate prescribing cascades in older adults: population level retrospective cohort study. BMJ. 2026;394:e100499. doi:10.1136/bmj-2026-100499. PMID: 42727946.