注意が必要な一般名処方/プラセボの有無
OC や LEP が一般名処方されている時に、注意すべきポイントを教えてください。
A: 成分名だけでは、医薬品の特定が難しい製剤があります。プラセボの有無の確認も必要です。
はじめに
低用量ピルとは、低用量の女性ホルモンを含むホルモン剤であり、エストロゲン(E)とプロゲスチン(P)の合剤です。
エストロゲン(卵胞ホルモン)
・体内にある内因性エストロゲンは3種類
・エストロン (E1) [弱]
・エストラジオール (E2) [強]
・エストリオール (E3) [中]
このうち、エストロゲン作用が最も強いのが、E2
E2 を元に合成した「エチニルエストラジオール」が、医薬品として開発されています
プロゲステロン(黄体ホルモン)
・体内にある内因性ホルモンは、「プロゲステロン」
・プロゲステロンを元に、合成プロゲステロンが医薬品として開発されており、合成プロゲステロンの総称が、「プロゲスチン」
「低用量」とは?
「低用量」というのは、エストロゲンの含有量のことです。
現在でも医薬品として使用されているのは、「中用量」「低用量」「極低用量」があります。
エストロゲンの含有量が多いほど、効果は強く、飲み忘れても影響が出にくいという利点はありますが、副作用のリスクも高いです。
そのため、ホルモン作用を得ながら、副作用を出にくくするために、開発されたのが「低用量」の製剤です。中用量よりも、副作用リスクが低く、毎日、長期間服用を続けやすい薬です。最近では、さらに、極低用量の製剤も開発されています。
副作用は、どちらも共通ですが、中用量の方が、低用量よりもリスクは比較的高いです。
- 頭痛
- 吐き気
- 不正出血
- 血栓症
1錠中に含まれるエストロゲンの含有量
- 高用量 ・・エストロゲン:1錠中に 50μg より多い
- 中用量 ・・エストロゲン:1錠中に 50μg
- 低用量(LD) ・・エストロゲン:1錠中に 50μg より少ない(30〜35)
- 超低用量(ULD)・エストロゲン:1錠中に 30μg より少ない(20)
※高用量製剤は、1960年代〜1970年代には主流でしたが、静脈血栓塞栓症(VTE)や心筋梗塞などの深刻な副作用が起こりやすいと言われています。
中用量製剤(プラノバール)は長期間服用すると、低用量よりもリスクが高いと考えられますが、効果は高いので、短期間服用する使い方(月経移動など)などで用いられます。
OC と LEP
低用量ピルには、避妊を目的として使われる OC (Oral Contraceptives) と、月経困難症の治療や子宮内膜症の予防のために使われる LEP (Low dose Estrogen-Progestin) があります。LEP の方が、OC よりも、エストロゲンが低用量です。
どちらも、エストロゲンとプロゲスチンを含む配合錠です。
成分の構成は、OC と LEP は一緒ですが、エストロゲンの含有量、プロゲスチンの種類、投与法に違いがあります。
エストロゲン含有量
いずれも、合成エストロゲンである、エチニルエストラジオール (EE) を含有しています。
OC は、1錠中の EE 含有量は 30〜40 μg。
LEP には、1錠中の EE 含有量が 35 μg の低用量 (LD) と、20 μg の極低用量 (ULD) の2種類があります。
プロゲスチンの種類
プロゲスチンには4種類あり、四世代に分類されています。
OC | LEP | |
---|---|---|
第1世代 (ノルエチステロン, NET) | シンフェーズ®〔3相性〕 | ルナベル® LD, ULD〔1相性〕 |
第二世代 (ノボノルゲストレル, LNG) | アンジュ®〔3相性〕 トリキュラー®〔3相性〕 ラベルフィーユ®〔3相性〕 | ジェミーナ®〔1相性〕 |
第三世代 (デソゲストレル, DSG) | マーベロン®〔1相性〕 ファボワール®〔1相性〕 | |
第四世代 (ドロスピレノン, DRSP) | ヤーズ®〔1相性〕 ヤーズフレックス®〔1相性〕 |
注釈)下線があるのは、EE 含有量が 20 μg/錠の極低用量
投与法の違い/P の含有量
EE は、一定量が含まれているのに対して、P の含有量には、2種類あります。
一相性
一定量の EE と P を摂取する方法
三相性
EE は概ね一定量摂取し、P は段階的に増加する方法
これは、排卵後、黄体ホルモンが徐々に増加する、自然な月経に近づけるように調整されています。そのため、錠剤を指定の順番通りに飲むことが大切です。
投与法の違い/周期
OC や LEP は、女性ホルモン周期に合わせて周期的な服用をします。
OC の投与方法
OC は、初回は月経1日目に投与開始し、21日間、EE+P を服用し、7日間は、EE+P を摂取しないというサイクルを繰り返します。
そのための服薬方法には、2種類あります。
(1) 自分で、休薬期間を7日間あける方法
1シートに21錠が埋め込まれている製剤は、このように服薬します。
ただし、自分で休薬するため、休薬期間後、再開することを忘れてしまう可能性があるので、注意が必要です。
(2) 毎日、服薬を続ける方法
1シートに28錠が埋め込まれている製剤は、このように服薬します。
このシートは、前半の21錠は実薬(EE+P を含む錠剤)、後半の7錠はプラセボ(EE+P を含まない錠剤)です。毎日の服薬習慣は維持されながら、周期的に服薬することができます。
(※薬価は、1シートあたりの値段なので、プラセボに値段を支払っている、というわけではありません)
LEP の投与方法
LEP の投与方法は、周期的に服薬する方法と、長期間継続する方法の2種類があります。
LEP は、月経困難症の治療などに用いられます。28日周期で服薬する場合、通常通りの月経周期となりますが、長期間服薬することで、月経間隔をあけ、月経回数を減らすことができるので、子宮を休め、月経時の身体の負担が軽減できます。
(※出血の状況により服薬周期は変わることがあります)
間違えやすい一般名処方
ヤーズ®配合錠とヤーズフレックス®配合錠は、どちらも、ドロスピレノンとエチニルエストラジオールの配合錠です。
どちらも、1シートに28錠が埋め込まれていますが、内容や使い方は異なります。
- ヤーズ配合錠:実薬24錠+偽薬 →28日周期で服薬する
- ヤーズフレックス配合錠:実薬28錠 →28日周期〜最長120日周期で服用する
そのため、両者を取り違えないように、十分に注意して確認することが重要です。
【般】ドロスピレノン・エチニルエストラジオール配合錠・プラセボ錠 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/2482011
- 28錠(実薬24錠+プラセボ4錠)
- ヤーズ配合錠
- ドロエチ配合錠「あすか」
- 28錠(実薬28錠)
- ヤーズフレックス配合錠
実際に、レセコン入力時に間違った事例も報告されており、製薬企業からは、取り違え防止のための協力依頼が出されています。
おわりに
なぜ、そのようになっているのかを正しく理解し、間違いやすいポイントを知ることは、リスク回避にもつながります。
過信せずに、十分に注意を払いましょう。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。