消化性潰瘍診療ガイドライン 2020
H.pylori 除菌治療
除菌治療と PPI
除菌治療前に PPI を投与していた場合、休薬は必要か?
A. 休薬は不要
除菌前に PPI 治療をしていても、除菌率には影響はなかった
※ただし、ボノプラザンの影響は不明
一次除菌治療の推奨は?
A1. 3剤併用では:P-CAB(ボノプラザン) > PPI
A2. 3剤併用の抗菌薬:
アモキシシリン(AMPC)+クラリスロマイシン(CAM)
または
アモキシシリン(AMPC)+メトロニダゾール<一次除菌には保険適用外>
A3. PPI 使用時は、シーケンシャル治療や4剤併用が有効<保険適用外>
二次除菌療法の推奨は?
A. [PPI または P-CAB(ボノプラザン)]+[アモキシシリン]+[メトロニダゾール]
三次除菌療法の推奨は?
A. [PPI]+[シタフロキサシン]+[メトロニダゾール または アモキシシリン]
除菌成功後の潰瘍再発予防治療は?
A. 必要ない
除菌治療直後は、除菌の成功・不成功は不明であり、除菌判定までの間は、抗潰瘍治療が望ましい
除菌成功例での、消化性潰瘍の再発例は1〜2%と極めて低く、長期間の抗潰瘍治療は必要ないと考えられている
除菌成功後の再感染率は?
A. 年2%以下
除菌後の GERD 発症
A. 除菌治療後に、一時的に、逆流性食道炎または GERD 症状が出現または増悪することがある
非除菌療法
胃潰瘍に対する非除菌療法
A.
PPI:防御因子増強薬を併用による潰瘍治癒の上乗せ効果はない →PPI 単独
H2RA:防御因子増強薬を併用することで潰瘍治癒の上乗せ効果がある
- シメチジン+エグアレンナトリウム水和物(アズロキサ (R))
- シメチジン+エカベトナトリウム水和物
- ラニチジン塩酸塩+テプレノン
胃潰瘍に対する非除菌療法(初期治療)
1) 第一選択薬:PPI か P-CAB(ボノプラザン) のどれか一つ
2) 第一選択薬が使用できない場合
- H2RA のどれか
- 選択的ムスカリン受容体拮抗薬(ピレンゼピン塩酸塩水和物)、または、一部の防御因子増強薬(スクラルファート、ミソプロストール)のどれか
- 上記のどれも投与できない場合、その他の防御因子増強薬のどれか
十二指腸潰瘍に対する非除菌療法
A.
PPI:防御因子増強薬を併用による潰瘍治癒の上乗せ効果はない →PPI 単独
H2RA:防御因子増強薬を併用することで潰瘍治癒の上乗せ効果がある
- シメチジン+アルジオキサ
十二指腸潰瘍に対する非除菌療法
1) 第一選択薬:PPI か P-CAB(ボノプラザン) のどれか一つ
2) 第一選択薬が使用できない場合
- H2RA のどれか
- 選択的ムスカリン受容体拮抗薬(ピレンゼピン塩酸塩水和物)、または、一部の防御因子増強薬(スクラルファート、ミソプロストール)のどれか
胃潰瘍に対する非除菌療法:維持療法
- 治癒後の再発抑制のために維持療法は必要
- 維持療法薬:H2RA やスクラルファート
- PPI と防御因子増強薬併用による上乗せ効果は得られない
- 治療期間:1年までの有効性は示されており、この期間は治療が必要
- 維持療法中は、内視鏡による定期観察が必要
十二指腸潰瘍に対する非除菌療法:維持療法
- 維持療法は、治癒後の再発抑制のために必要
- 維持療法薬:PPI、H2RA、スクラルファート
- PPI と防御因子増強薬の併用による上乗せ効果は得られない:PPI あるいは H2RA の単剤治療
- 治療期間:2年までの有効性が示されているため、この期間は治療が必要
- 維持療法中は、内視鏡による定期観察が必要
Q.除菌判定のためには、PPIを4週以上休薬しなければならないのですか?
A.日本ヘリコバクター学会ガイドライン2009によると、除菌判定は除菌治療薬中止後4週以降に行うことになっています。しかし、偽陰性例を少なくするため、除菌治療終了3か月以降に行うことが望ましいとの報告もあり参考にすべきと思います。除菌判定前にPPIが使用されていると、30-40%に偽陰性になることが知られています。そこで、除菌判定前には一定期間のPPI休薬が必要です。保険適用上は、当初はPPIを4週間以上休薬が必要とされていましたが、現在では2週間の休薬が求められています。