CKD 患者のシックデイ

CKD 患者のシックデイ

CKD 患者に対するシック・デイの定義やシック・デイルールは確立されていない エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023 リスク及びそれに対する対処を理解しておき、個別に対応することが重要である
原則: CKD 患者は、著しい体調不良時には、速やかに医療機関を受診し、薬物の減量や一時的休薬を含めた適切な治療を受ける必要がある
 

なぜシック・デイに注意すべきか

  • 腎機能が悪化する可能性があるから
体調不良なシック・デイには、薬剤性を含む AKI リスクが高くなる
特に、高齢者や CKD 患者では、AKI のリスクが高い
 
  • 薬剤の副作用が出やすくなるから
脱水状態では、血圧が低下し、腎血漿流量が低下するなどして腎機能が低下して、腎排泄型薬剤の血中濃度が上昇する
☑️ビグアナイド薬
☑️活性型ビタミンD など
 

注意すべき薬剤

AKI リスクが高い薬

RAS 阻害薬
利尿薬
NSAIDs

腎臓排泄型の薬剤

メトホルミン
リチウム
ジゴキシン
日本腎臓病薬物療法学会の資料を参照!

具体的な対応

「シック・デイ時のリスク」と「休薬のリスク」を考慮して判断する

NSAIDs

[シック・デイ時のリスク]
NSAIDs は腎障害性薬剤.
特に脱水状態では AKI リスクが高く、利尿薬や RA 系阻害薬との相互作用(トリプルワーミー)による AKI リスクが懸念される.
[休薬のリスク]
休薬時には、代替薬がある →アセトアミノフェン
NSAIDs:シック・デイ時には、「休薬」する
トリプルワーミー 2013年に Lapi F が、利尿薬・RAS 阻害薬(ARB、ACE 阻害薬)と NSAIDs の併用により AKI の発症率が増加することを報告した(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23299844/

ビグアナイド薬

[シック・デイ時のリスク]
ビグアナイド薬は腎排泄型薬剤.腎機能低下者には慎重に使用しないといけない薬剤(<30禁忌).
シック・デイ時に、腎機能が低下すると、乳酸アシドーシスのリスクが高まる.乳酸アシドーシスが発症すると、致死的な経過を辿る可能性もあり、極めて注意が必要である.
[休薬のリスク]
本剤の休薬が、血糖コントロールに与える影響は、短期間で急激に起こるものではない.シック・デイ自体が血糖コントロールに影響する可能性がある.
休薬するメリットの方が大きい.
ビグアナイド薬:シック・デイ時には、「休薬」する
 

SGLT2 阻害薬

[シック・デイ時のリスク]
本剤服用中はケトアシドーシスのリスクが高まる.
SGLT2 阻害薬自身が、脱水を引き起こす可能性があるため、脱水状態をさらに悪化する可能性がある.
[休薬のリスク]
糖尿病の場合:
本剤の休薬が、血糖コントロールに与える影響は、短期間で急激に起こるものではない.シック・デイ自体が血糖コントロールに影響する可能性がある.
→休薬するメリットの方が大きい.
心不全CKDの場合:非糖尿病患者におけるシックデイ対策は確立されていない
心不全:心不全症状の悪化に伴うシックデイでは,SGLT2 阻害薬の休薬による心不全の悪化が懸念される
→病態に応じて休薬を判断すべき
CKD
→休薬を考慮する
SGLT2 阻害薬:病名に応じて判断する ・DM:休薬すべき ・CKD:休薬を考慮するので、平素から確認しておく ・心不全:シック・デイ時の対応を平時から確認
 

利尿薬

[シック・デイ時のリスク]
脱水状態では AKI リスクを高める.NSAIDs・利尿薬・RA 系阻害薬との相互作用(トリプルワーミー)による AKI リスクが懸念される.
[休薬のリスク]
体液過剰状態の悪化が懸念される.
利尿薬:対処法は、個別の症例に応じて、慎重に検討すべき
 

RA 系阻害薬

[シック・デイ時のリスク]
脱水状態では AKI リスクを高める.NSAIDs・利尿薬・RA 系阻害薬との相互作用(トリプルワーミー)による AKI リスクが懸念される.
[休薬のリスク]
一時的な休薬による死亡やCVDリスクが高まる懸念がある
RA 系阻害薬:対処法は、個別の症例に応じて、慎重に検討すべき
 

活性型ビタミンD薬

[シック・デイ時のリスク]
脱水状態では、腎機能が低下して、活性型ビタミンD製剤による、高カルシウム血症や AKI リスクが高まる.
高カルシウム血症では、さらに腎機能が低下する可能性がある(腎濃縮力障害から脱水症悪化.高カルシウム血症による腎動脈攣縮から腎血流が低下する)
シック・デイが関連したと考えられる活性型ビタミンD薬に関連した、高カルシウム血症や AKI の症例が多く報告されている.
シック・デイの症状が、高カルシウム血症から起こっている可能性がある(食思不振・脱水症)
[休薬のリスク]
一次休薬に伴うリスクは低い(一時的な休薬が、すぐに骨密度に影響する可能性は低いと考えられる)
→著しい食思不振や脱水状態では、一時休薬を考慮しても良い
活性型ビタミンD薬:一時休薬を考慮しても良い
 
 

参考資料