ステロイド長期投与患者における周術期ステロイドカバー

 
通常
糖質コルチコイドは、副腎皮質で産生され、視床下部-下垂体-副腎系 (HPA系) によって調節されている。
  • 産生量
    • 5~10mg/m2/day のコルチゾールが産生されている [1]
      • ハイドロコルチゾン20~30mg/day
      • プレドニゾロン5~7mg/day に相当
    • 内因性コルチゾール:12 mg/m2/day [2]
コルチゾールは、侵襲から体を守るために重要な役割を担う
 
侵襲時
侵襲時には、視床下部-下垂体-副腎系 (HPA系) が活性化される
約10倍程度に産生量が増加する
  • 侵襲時:
    • 最大約 100 mg/m2/day [1]
    • 大手術では75–150 mg/day に増加 [2]
 
ステロイドカバー
手術ストレス糖質コルチコイド投与量医学的ストレス糖質コルチコイド投与量
最小侵襲1時間以内の局麻手術(例:通常の歯科処置,皮膚生検)ハイドロコルチゾンを通常量または15‐30mg/day発熱のない咳嗽, 上気道感染ハイドロコルチゾンを通常量または15‐30mg/day
低侵襲鼡径ヘルニア手術 大腸内視鏡処置開始時にハイドロコルチゾン25mg iv,処置後は通常量ウイルス性疾患 気管支炎1日量の倍量または3倍量の糖質コルチコイドを回復まで ( 例 : ハイドロコルチゾン40‐60mg/day を経口分割投与)
1時間以上の局麻下の歯科処置 (例:複数抜歯,歯根膜手術)1日量の倍量の糖質コルチコイド(例:ハイドロコルチゾン40 mg 経口投与) 翌日は通常量
中侵襲開腹胆摘出術 大腸切除術 下肢血行再建術 関節全置換術 腹式子宮摘出術術日にハイドロコルチゾン50‐75mg/day で iv(例:25mg を8h 毎) 合併症のない場合1‐2日で通常量へ漸減胃腸炎 肺炎 腎盂腎炎回復までハイドロコルチゾン25mg を8h 毎に iv
大侵襲心血管手術 Whipple 法 食道胃切除 全大腸切除術 肝切除術 下垂体腺腫摘出術 全麻化の歯科処置,顎矯正手術, 重症顔面外傷ハイドロコルチゾン10‐150mg/dayを iv(例:50mgを8h毎) 2‐3日で通常量へ漸減膵炎 心筋梗塞 分娩ハイドロコルチゾン10‐150mg/day を iv(例:50mgを8h毎) 病態が安定してから漸減
重症疾患/集中治療大外傷 Life-threatening complicationハ イ ド ロ コ ル チ ゾ ン20mg/day を iv(例:50mg を6h毎 or 0.18mg/kg/h cdiv)敗血症性ショックハイドロコルチゾン最大20mg/day を iv(例:50mg を6h毎 or 0.18mg/kg/h cdiv)
 
参考資料)
[1] 淺野間 理仁ら:ステロイド長期投与患者における周術期ステロイドカバー、四国医誌、66巻3、4号、85~90 (2010)
[2] Jung C et al., Med J Aust. 188(7), 409-13 (2008) [PMID: 18393745] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18393745/