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肺がんの薬物治療

肺がんの薬物治療

ポイント
①組織型で、「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」に分けられる
→病態や治療方針が大きく異なる
  • 小細胞肺がん:
    • 限局型(LD:Limited Disease)と 進展型(ED:Extensive Disease)とで治療方針が異なる
  • 非小細胞肺がん:
    • ドライバー遺伝子変異の有無や,PD-L1 遺伝子発現の程度をもとに,使用する薬剤を選択
 

分類

組織型分類
  • 小細胞肺がん・・2015年の新WHO分類で、神経内分泌腫瘍の亜型に分類された
    • 肺がん全体の約 10〜15%
    • 増殖速度が速い
    • 放射線や薬物療法に対する感受性は高い
    • 好発部位:肺門部(診断技術の向上により肺野部でも見つかるようになった)
  • 非小細胞肺がん:腺がん,扁平上皮がん,大細胞がん
    • 肺がん全体の約 80〜90%
    • 治療薬選択において,扁平上皮がんと非扁平上皮がんの鑑別が非常に重要
    • 好発部位:
      • 腺がん・大細胞がん:肺野
      • 扁平上皮がん:肺門
    • 非扁平上皮がん:遺伝子変異が多い→分子標的薬
 
肺がんは10種類以上に分けられるが、頻度が大きいのは、「腺がん」、「扁平上皮がん」、「小細胞がん」、「大細胞がん」の4種類。
  • 非小細胞がん(Non-Small Cell Lung Cancer ; NSCLC)
    • 腺がん
      • 腺組織と似た形状
      • 発生しやすい部位:肺野部
      • 女性やタバコを吸わない人にできる肺がんの多くが、この腺がん
    • 扁平上皮がん(Squamous Non-Small Cell Lung Cancer ; Sq NSCLC)
      • 扁平上皮(皮膚・粘膜)と似た形状
      • タバコとの強く関係する
      • 発生しやすい部位:肺門部
    • 大細胞がん
      • 正常組織とは類似していない
      • 発生しやすい部位:肺野部
  • 小細胞がん(Small Cell Lung Cancer ; SCLC)
    • 正常際組織とは似ていない。細胞が小さい。
    • 他の組織型と比べて、発育成長が早く、転移しやすい
    • 生しやすい部位:肺門部
TMN 分類
進行度分類:TNM分類から、stage 分類
  • T 因子:原発巣の最大浸潤
N 因子:転移の有無
  • N1, 同側腋窩リンパ節転移がある
  • N2, 癒着した腋窩リンパ節転移があるまたは腋窩リンパ節転移は認められないが,同側内胸リンパ節転移があるもの
M 因子:遠隔転移の有無
  • M0, 遠隔転移がないもの
  • M1, 遠隔転移があるもの
サブタイプ分類
    肺がん薬物治療 Key Drug:
    • 化学療法薬:白金製剤
    • 分子標的薬:ドライバー遺伝子変異に基づき選択

    標準治療

    非小細胞がん手術による治療が中心 ・再発予防のため、術後に術後化学療法を行うこともある ・手術が難しい場合:放射線治療→薬物療法
    小細胞がん ・早期に発見されることが少ないため、手術+抗がん薬または抗がん薬単独による治療が中心 ・放射線治療を併用することもある

    非小細胞肺がん

    Ⅰ期から一部のⅢ期手術が中心
    • ⅠA(ⅠA1,ⅠA2)期:手術単独
    • ⅠA3,ⅠB,ⅡA期:
      • 肺腺がん:術後化学療法(ユーエフティⓇを手術後2年間内服)
      • 扁平上皮癌:手術単独
    *手術が行えない場合,または手術を希望しない場合:放射線療法
    非小細胞肺癌のI-II期とIII期の一部では、外科切除が治療の中心を担っている。しかし、外科切除のみでの成績は十分ではなく、周術期に薬物療法を追加することによる治療成績の向上が望まれるhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/112/6/112_931/_pdf/-char/ja
    Ⅲ期化学放射線療法
    • シスプラチン+ビノレルビン療法
    • シスプラチン+S-1療法
    • シスプラチン+ドセタキセル療法
      • 4週ごとに2サイクル
    • カルボプラチン+パクリタキセル療法
      • 週に1回,全部で6回
    化学放射線療法後の免疫チェックポイント阻害薬による地固め療法
    • デュルバルマブ
      • 2週間ごと,1年間
    Ⅳ期化学療法
    • 抗剤(細胞傷害性抗がん薬)
    • 分子標的治療薬
      • ドライバー遺伝子
        • Ⅳ期非小細胞肺がん:ドライバー遺伝子変異/転座陽性のときの使用薬
          ドライバー遺伝子の変異や転座がある場合には、分子標的治療薬(単独または抗がん薬と併用)が選択される
    • 免疫チェックポイント阻害薬
      • PD-L 1 タンパク:高発現
        • PD-L1 タンパクが高発現の場合、効果が期待されるため、免疫チェックポイント阻害薬(単独または抗がん薬と併用)が選択される
        • ドライバー遺伝子の変異や転座がない場合や、PD-L1 タンパク発現が低い場合は、抗がん薬と免疫チェックポイント阻害薬併用

    薬物療法

    非小細胞肺がん:ⅠA, ⅠB 期
    非小細胞肺がん:ⅡA, ⅡB 期
    非小細胞肺がん:ⅡB, ⅢA 期
    非小細胞肺がん:ⅢA期-N2, ⅡB期-N2
    非小細胞肺がん:ⅢB, ⅢC 期
    非小細胞肺がん:Ⅳ 期
    非小細胞肺がん:Ⅳ 期・ドライバー遺伝子変異/転座陽性の場合
    非小細胞肺がん:Ⅳ 期・EGFR 遺伝子変異陽性
     
    肺癌診療ガイドライン―悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む、2023年版 https://www.haigan.gr.jp/guideline/2023/

    薬物治療レジメン

    ドライバー遺伝子

    ドライバー遺伝子とは、がんの増殖に直接関わる遺伝子。
    非小細胞肺がんでは、いくつかのドライバー遺伝子と関連することが知られている。
    遺伝子検査一次治療二次治療
    Ⅳ期 非小細胞肺癌非扁平上皮癌 扁平上皮癌EGFR ALK ROS1 BRAF MET RET各ドライバー遺伝子に対する標的治療細胞障害性抗癌薬(+免疫チェックポイント阻害薬)
    Ⅳ期 非小細胞肺癌非扁平上皮癌 扁平上皮癌KRAS NTREK細胞障害性抗癌薬(+免疫チェックポイント阻害薬)各ドライバー遺伝子に対する標的治療
    2022年版肺癌診療ガイドラインでは、ドライバー遺伝子変異の有無によって進行期非小細胞肺癌 の治療方針を決定するよう推奨されている。