手足症候群

手足症候群

症状と特徴

手掌や足底などの四肢末端部に発現する、発赤、腫脹、そして著しい不快感、うずきといった皮膚関連有害事象を総称して、「手足症候群」という。

原因薬剤

  • フッ化ピリミジン系製剤・・・特にカペシタビンに特徴的
  • マルチキナーゼ阻害剤・・・レゴラフェニブ、ソラフェニブで高頻度に発生する

症状

  • フッ化ピリミジン系製剤による手足症候群の初期症状
早期には、手や足に、しびれチクチクまたはピリピリするような感覚の異常や、やけどした時のような痛みが認められる(この時には、皮膚の視覚的な変化は伴わないこともある)
最初に現れる皮膚の変化として、比較的びまん性の発赤(紅斑)(全体的に赤く、腫れぼったい)が見られる
分子標的薬に比べ発現は穏やかであり、数週~数ヵ月後に発現することが多い
  • マルチキナーゼ阻害剤による手足症候群の初期症状
限局性で角化傾向が強い
比較的早期に発現し、数日〜数週で発現することもある
したがって、投与前からしっかりとした予防対策を講じることが重要。また、投与終了後も持続することもあるため、投与終了後も対策を続ける
 

観察ポイント

皮膚症状は、出現するもの、と考えて、予防早期介入を行うこと重要
治療効果が高いほど、症状も出やすいと言われているため、しっかりと対策して治療を続けることは重要

観察

抗がん剤の治療が始まったら、自分の手や足をよく観察してもらう

原則は、保清・保湿・保護

  • 保清
    • ぬるま湯で、洗浄剤や低刺激性の石鹸で洗う(よく泡立ててから洗うと良い)
    • 症状があると、シャワーなどを控えがちになる →清潔にすることが大切
    • 優しく洗う(ナイロンタオルなどは使わない)
    • 洗浄剤が残らないように、十分に洗い流す
    • 水分を拭き取るときは、こすらず、柔らかいタオルでそっと押さえるように
    • かさぶたはとらない
  • 保湿
    • 保湿剤は1日に数回塗布(入浴後は必ず) こまめに塗る
    • 保湿剤は優しく伸ばす
    • 保湿剤のベタつきを気にしている場合など、適宜、剤型変更を相談するなど、患者が接触的に保湿できるように配慮する
    • 尿素配合の保湿剤は染みることがあるので、医師の指示に従う(角化した皮膚の部分のみ、にした方が良い)
  • 保護
    • 圧迫・熱・摩擦を避ける
    • 皮疹を気にして触らないようにする
    • 刺激を避ける
      • 顔に皮疹がある場合、髪があたらないようにヘアバンドなど
      • 綿素材のやわらかい手袋や靴下を着用して、圧迫や刺激を避ける
      • 水を使うときは、保湿剤を塗り、木綿の手袋の上にゴム手袋してからする
      • 締め付けの強い靴下はさける・木綿の厚めの靴下を履く・やわらかい中敷をあてる・足にあった柔らかい靴を選ぶ・室内ではスリッパをはく
    • 長時間の立ち仕事や歩行、ジョギングは避け、こまめに休む
    • 外に出る際は直射日光を避け、日焼け止めを使用する

予防

手足症候群の治療

重症化した場合、原因となっている薬剤を早期に休薬した方が回復は早く、がん薬物療法を早く再開できることを説明する(がん患者さんは我慢しがち)
カペシタビンについて、休薬や減量をおこなっても、適切に治療継続が行われれば、治療効果は損なわれないことが報告されている
 

原因薬剤の調整

Grade2 以上の副作用が出現したら、休薬する
Grade2 の目安=(チクチク感などの違和感ではなく)はっきりとした痛みを伴うような症状の強さを Grade 2 と判定する
Grade1慎重に投与継続
Grade2Grade0〜1になるまで休薬 軽快後、休薬前の用量で再開 2回目からは軽快後、一段階減量して治療再開
Grade3Grade0〜1になるまで休薬 軽快後、一段階減量して治療再開

皮膚症状の治療

Grade1保湿剤の外用 角質除去 胼胝・鶏眼処置
Grade2ステロイド外用 創傷被覆材による処置
Grade3ステロイド外用 創傷被覆材による処置
在宅の場合、Grade 1 でもステロイド処方されることがある
(参考)がん支持療法ハンドブック
腫脹やほてり感が強い場合は、冷却法も行われる

症状発生時のケア

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一般的アドバイス

  • 保湿剤の使用(朝、夕、入浴後15分以内) 、手を洗ったら保湿剤
  • 外出時の日焼け防止対策(帽子、日焼け止めクリームSPF20程度のものを頻繁に塗りなおすなど)
  • 運動や手作業により指先や足裏に圧をかけないよう注意を促す
  • 靴や靴下は足を締め付けない柔らかいものにし、靴擦れや靴下のゴム跡が出ないようにする
  • 手洗いの都度、保湿剤を使用する(市販の保湿剤を使用する場合は、アルコールフリー、無香料のものを選ぶ)
  • 毎日足裏も変化がないか確認する
(参考)あいちキャンサーネットワーク

参考資料

 
NO16966 試験