RAA 系抑制薬(まとめ)
RAA系抑制薬
RAA(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン)系抑制薬
特長:
高血圧や心不全治療の中心的な役割を担う薬剤群
特長
特徴 | ACE阻害薬 | ARB | ARNI | 直接レニン阻害薬 |
---|---|---|---|---|
作用機序 | ACE阻害+カリクレイン-キニン系亢進 | AT1受容体阻害 | ARB+ネプリライシン阻害 | レニン直接阻害 |
主な適応 | 心不全、心筋梗塞後、糖尿病性腎症 | 高血圧、ACE阻害薬不耐容例 | 慢性心不全(HFrEF) | 高血圧(限定的) |
臓器保護効果 | 冠動脈イベント抑制 | 腎保護、脳卒中予防 | 心不全予後改善 | エビデンス不足 |
副作用 | 咳嗽(20%)、血管浮腫 | 高カリウム血症、腎機能悪化 | 低血圧、腎機能悪化 | 高カリウム血症、頭痛 |
主要エビデンス | SOLVD試験(心不全) | LIFE試験(高血圧) | PARADIGM-HF試験(心不全) | ALTITUDE試験(中止) |
薬剤名
PK 特徴
例外 | ||
ACE 阻害薬 | 主に、腎排泄型 | テモカプリル |
ARB | 主に、肝代謝型 | |
ARNI | ||
直接レニン阻害薬 |
ACE阻害薬の特徴
・カリクレイン-キニン系を亢進することで血管拡張と抗線維化作用を発揮
・心筋梗塞後の左室リモデリング抑制に必須(24時間以内投与推奨)
・咳嗽副作用はブラジキニン蓄積が原因で、20%に発生
ARBの優位性
・ACE阻害薬と同等の降圧効果を持ちながら咳嗽が少ない
・ロサルタンとイルベサルタンは尿酸排泄促進作用を有する
・心不全治療ではACE阻害薬不耐容例で代替使用
ARNIの革新性
・バルサルタン(ARB)とサクビトリル(ネプリライシン阻害薬)の合剤
・PARADIGM-HF試験でACE阻害薬より20%の死亡率低下を達成
・ガイドラインでNYHA II-IIIのHFrEF患者への優先使用が推奨
直接レニン阻害薬の課題
・アリスキレン(ラジレス)のみが臨床使用
・ALTITUDE試験で腎機能悪化リスクが判明し適応が限定
・妊娠中や両側腎動脈狭窄では禁忌
臨床適用のポイント
- 心不全治療:HFrEFではARNIが第一選択、ACE阻害薬/ARBは代替
- 冠動脈疾患:ACE阻害薬がエビデンス最強(急性期~慢性期)
- 腎保護:ARB/ACE阻害薬で尿蛋白30%減少が期待可能
- 副作用管理:血清K値>5.5mEq/LまたはCr上昇>30%で減量/中止
これらの薬剤選択には、基礎疾患や臓器障害の有無を総合的に評価する必要があります。特にARNIの登場により、心不全治療のパラダイムが変化している点が注目されます。