アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬 (ARB)
薬剤一覧
薬剤比較
用法・用量
適応症に違いがあることに注意
高血圧症 | 高血圧及び蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症 | 腎実質性高血圧症 | 慢性心不全(軽症~中等症) | |
---|---|---|---|---|
ロサルタン | ○ | ○ | ||
カンデサルタン | ○ | ○2,4,8,12mg錠 | ○2,4,8mg錠 | |
バルサルタン | ○ | |||
テルミサルタン | ○ | |||
オルメサルタン | ○ | |||
イルべサルタン | ○ | |||
アジルサルタン | ○ (先発は小児適応あり) |
ガイドライン
ガイドラインでは、降圧効果について、ARB 内の使い分けについては明記されていない
高尿酸血症合併高血圧については、「ARB のロサルタンは尿酸トランスポーター1 (URAT1) の阻害作用を有しており、臨床的にも血清尿酸値を低下させることが報告されていることから、高尿酸血症合併高血圧に対する第一選択薬として適している」と記載されている。ARB の尿酸に対する作用については、イルベサルタンも同様に有している(下述)。
力価比較
オルメサルタン | 10 | 20 | 20-40 | 40 | |
---|---|---|---|---|---|
テルミサルタン | 20 | 40 | 40-80 | 80 | |
アジルバ | 10 | 20 | 20 | 40 | |
カンデサルタン | 4 | 8 | 16 | ||
バルサルタン | 40 | 80 | 160 | ||
ロサルタン | 25 | 50 | 100 | ||
イルベサルタン | 50 | 100 | 200 |
参考)日本赤十字社 和歌山医療センター フォーミュラリ
降圧効果
ガイドラインでは使い分けが明記されていないように、概ね降圧効果に大きな差はない(ただし、報告によって違いはある)。しかし、大きな傾向としては下記の通り。
アジルサルタン・オルメサルタン:降圧効果が比較的高そう
ロサルタン:他のARBよりもやや弱め
- テルミサルタン:持続的
- テルミサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、ロサルタンの比較 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16081340/
- テルミサルタンは、他のARBと比較してより持続的な血圧コントロールを提供し、特に朝の血圧上昇を抑制する効果があると報告されている
- オルメサルタン:降圧効果が高い
- オルメサルタンとロサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、イルベサルタンの比較 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22920046/
- オルメサルタンは他の ARB より降圧効果が高く、副作用リスクは同等だった
尿酸排泄促進作用
ARB のうち、ロサルタン・イルベサルタンは、URAT1 の阻害作用をもち、血清尿酸値を低下させることが期待できるため、高尿酸血症を合併している場合は推奨される。
ロサルタン・イルベサルタン:尿酸排泄促進作用がある
臓器保護作用
腎保護作用
糸球体内圧を低下させることで、蛋白尿改善作用があることが期待されている
- アジルサルタン vs カンデサルタン https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33677450/
- CKD患者における腎保護作用の点で、アジルサルタンが優れる
心臓保護作用
- アジルサルタン https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27086671/
- 心室肥大の抑制に優れている
血糖改善作用
- アジルサルタン https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27536242/
- 血圧低下効果に加え、インスリン感受性の向上や代謝シンドロームの改善効果を持つ可能性が期待されている
片頭痛の予防
- カンデサルタン 頭痛の診療ガイドライン2021
- メタアナリシスやシステマチックレビューで、ACE 阻害薬リシノプリルと ARB のカンデサルタンは片頭痛の予防薬としての有用性が示されている
- テルミサルタン80mg/日に片頭痛予防効果があることが示唆されている慢性頭痛の診療ガイドライン2013
- オルメサルタンも、エビデンスは強くないが、有用である可能性が示唆されている慢性頭痛の診療ガイドライン2013
ACE 阻害薬(リシノプリル)、ARB(カンデサルタン)は高血圧がある片頭痛の予防に有効である。リシノプリルは 5mg/日から開始し、片頭痛発作の減少が不十分であれば、20mg/日まで増量する。カンデサルタンは、8mg/日の使用を推奨する。
[弱い推奨/エビデンスの確実性B]
PKの特徴
排出経路
- テルミサルタン:完全肝代謝型(ARB で唯一)、半減期が24時間と他剤と比較して圧倒的に長い
薬物相互作用
ロサルタン | カンデサルタン | バルサルタン | テルミサルタン | オルメサルタン | イルベサルタン | アジルサルタン | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
代謝 | CYP2C9 CYP3A4 | カルボキシルエステラーゼ 一部、CYP2C9 | 未変化体 一部、CYP2C9 | UGT酵素 (グルクロン酸抱合) | エステラーゼ | CYP2C9 グルクロン酸抱合 | 脱炭酸 CYP2C9 |
薬価
アジルサルタンが最も新しい薬剤であるため、他剤よりも高額だが、後発医薬品も販売開始され、価格の面では使いやすくなってきたと言える。
ロサルタン | カンデサルタン | バルサルタン | テルミサルタン | オルメサルタン | イルベサルタン | アジルサルタン | |
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50mg | 8mg | 80mg | 40mg | 20mg | 100mg | 10mg | |
GE | 21.2 25.9 | 11.7 31.0 | 10.1 13.4 14.6 | 10.1 15.3 18.8 19.2 | 11.2 14.6 20.2 | 12.4 19.8 47.9★ | 21.4 |
先発 | 48.4 | 48.9 | 27.9 | 38.2 | 37.4 | 47.9 | 55.1 |
関連資料
ガイドライン
関連事項