2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン
第1章 抗凝固薬の分類と作用機序
周術期と抗凝固薬
第5章 心房細動
3.4 周術期(抜歯、消化管内視鏡、外科手術など)の抗凝固療法
各患者における血栓塞栓症リスク、使用している抗凝固薬の種類、観血的手技の出血リスクなどの複数の要因を考慮して、患者ごとにその都度判断を下さなければならない。
基本的スタンス
直達止血の可能な観血的手技:
・できるだけ休薬しない
休薬を要する観血的手技:(緊急手術は別)
・休薬期間は最小限.
・止血が確認できれば可及的すみやかに抗凝固薬を再開する
表 39 心房細動患者の抗凝固療法における出血リスクからみた観血的手技の分類
【出血低リスク手技】(原則として抗凝固薬の休薬不要)
・ 歯科手術 [抜歯,切開排膿,歯周外科手術,インプラントなど]
・ 白内障手術
・ 通常消化管内視鏡 [上部・下部消化管内視鏡,カプセル内視鏡,内視鏡的逆行性膵胆管造影など]
・ 体表面手術 [膿瘍切開,皮膚科手術など]
・ 乳腺針生検,マンモトーム生検
【出血中リスク手技】(抗凝固薬の休薬を可能なら避ける)
・ 出血低危険度の消化管内視鏡 [バルーン内視鏡,膵管・胆管ステント留置,内視鏡的乳頭バルーン拡張術など]
・ 内視鏡的粘膜生検
・ 経会陰前立腺生検
・ 経尿道的手術 [膀胱生検,膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt),前立腺レーザー手術,尿管砕石術など]
・ 経皮的腎瘻造設術
・ 緑内障,硝子体手術
・ 関節鏡視下手術
・ 乳腺切除生検・良性腫瘍切除
・ 耳科手術・鼻科手術・咽頭喉頭手術・頭頸部手術
・ 心臓デバイス植込手術
・ 血管造影,血管内手術
・ 心臓電気生理学的検査,アブレーション(心房細動アブレーションは除く)
【出血高リスク手技】(原則として抗凝固薬の休薬が必要)
・ 出血高危険度の消化管内視鏡 [ポリペクトミー,内視鏡下粘膜下層剥離術(ESD),内視鏡的十二指腸乳頭切除術,内視鏡的食道・胃静脈瘤治療,超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-FNA)など]
・ 気管支鏡下生検
・ 硬膜外麻酔,脊髄くも膜下麻酔
・ 開頭術・脊髄脊椎手術
・ 頸動脈内膜剥離術
・ 胸部外科手術(胸腔鏡を含む)
・ 腹部・骨盤内臓手術(腹腔鏡を含む)
・ 乳癌手術
・ 整形外科手術
・ 頭頸部癌再建手術
・ 下肢動脈バイパス術
・ 肝生検
・ 腎生検
・ 経直腸前立腺生検
・ 経尿道的前立腺切除術(TUR-P)
・ 体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
・ 経皮的腎砕石術
【出血・塞栓症高リスク手技】(抗凝固薬の継続ないし短期休薬)
・ 心房細動アブレーション