ワルファリンを飲んでいる時に注意すべき市販薬
ワルファリンを服用中に注意が必要な市販薬には、何がありますか?
A: ワルファリンは、治療上、非常に重要な薬ですが、薬理効果が変動することがあり、相互作用も多いので、注意が必要な薬です。
市販の整腸薬には、納豆菌を含有する薬もあり、注意が必要です。
ワルファリンとは?
ワルファリンとは、ワルファリンは、抗凝固薬の一つであり、血液凝固機構に対して抑制的に作用します。特に、静脈血栓症の予防のために重要な薬のひとつです。
中でも、心房細動があると、心房が不規則に痙攣するため、心房内で血液が澱み、血栓ができやすい状態になります。この血栓が血流に乗って運ばれ、脳の太い血管を詰まらせてしまいます。心房細動が原因の脳梗塞は、脳の広い部分が影響を受けます。
そのため、心房細動に対して、心房細動自身の治療に加えて、高血圧や糖尿病などの基礎疾患の治療、脳梗塞予防のための抗凝固薬の治療を行うことが、非常に重要です。
脳梗塞を予防するために、抗凝固薬の長期管理が必要です。

ワルファリンの薬学的管理
ワルファリンは、日本では1976年に承認され、長い間使用されています。新規に開発されている DOAC よりも安価であり、使用経験も豊富ですが、いくつかデメリットもあります。
ワルファリン服用患者様の薬学的管理において、特に重要なポイントを挙げます。
○長期間の服薬が重要
血栓症予防のため、長期間の治療が必要であることを説明した上で、治療を継続できるように支援することが大切です。
○用量に個人差が大きい
効果を調べるために、定期的に血液検査をしながら、用量を調節することを説明します。
○副作用兆候の説明
患者様1人づつにあった量を調節します。相互作用やビタミンK摂取状況など、いろんな影響でも、ワルファリンの血中濃度が変動する可能性があります。そのため、過量投与の兆候(あざ、歯茎からの出血等)をあらかじめ説明し、対処を説明しておきます。
○相互作用に注意が必要
ワルファリンは、非常にたくさんの医薬品と相互作用があるために、特に注意を払っています。
医療用医薬品だけでなく、市販薬・サプリメント・食品とも相互作用があります。
○他科受診時の注意点
歯科診療や内視鏡検査・侵襲的手術など、侵襲が大きい場合には、事前に、ワルファリンの休薬が必要な場合があります。
また、薬薬相互作用の可能性もあります。
そのため、患者様には、お薬手帳で、服用中の薬剤を、必ず伝えるように説明することは大切です。
ビタミンK
薬力学的相互作用は、ビタミン K との拮抗が原因で起こります。
ビタミン K は、体内において、血液凝固因子を活性化させ、血を止めるために働きます。

ここで使用した画像を再掲しています。
そのために、ワルファリンを服用中の注意点として、
- ビタミン K を過剰摂取しない
- ビタミン K 摂取量の変動幅を抑え、一定の許容量を摂取する
ことが重要です。
食事指導
ワルファリンを服用期間中は、納豆を食べてはいけません。
ワルファリンを服用している人では、ビタミン K の摂取量に関して、食事に注意が必要です。
ビタミン K には、多種類ありますが、天然に存在するのは、ビタミンK1(フィロキノン)とビタミン K2(メナキノン類)です。
ビタミン K2 のうち、代表的なものには、動物性食品に含まれるメナキノン-4 と、納豆が産生するメナキノン-7 があります。
納豆は、ビタミン K を豊富に含んでいる、かつ、酵素をもっているのでビタミン K を産生することができます。
そのため、ワルファリン服用中は、納豆を食べてはいけません。
「同時に食べなければ良いのか?」と言われることもあります。納豆摂取によりワルファリンの薬効が減少する効果は、1回摂取した場合でも数日間残ると言われています。時間を開ければ食べても良い、というわけではなく、ワルファリン服用期間中は、絶対に、食べてはいけません。
緑黄色野菜(特に、色が濃い野菜)も、ビタミン K の含有量が多い食品です。
ワルファリンの製薬企業は、栄養制限をすることのデメリットを考慮して、「緑黄色野菜の摂取量は制限は不要です」としています。
ただ、ワルファリンの効果の変動が大きい場合には、制限するように指導されている可能性もあります。
ワルファリン服用中のビタミン K 摂取量に関しては、1日150μg 以上、325μg 以下 [1]、1日80μgの摂取が理想的でありビタミン K の変動幅を 250 μg/日以内にする [2] などの意見があります。
ビタミン K 摂取量については、血栓症リスクとワルファリンの効果の変動しやすさに応じて、個別に判断すべきであり、医師と十分な協議が必要です。
過剰な制限をしないで済むように、事前に十分に確認しておくことが重要です。
注意すべき市販薬
(すいません、ようやく本題に入ります。)
ワルファリン服用中の患者様は、市販薬・サプリメント・健康食品を使用する前に、必ず、医師・薬剤師に相談してください
裏面の表示を確認してください。
■してはいけないこと
抗凝血剤(ワルファリン)で治療を受けている人。
循環器用薬
<中性脂肪>
出血傾向を強める可能性があります。
(成分の例)
- エパデール
<足のむくみ>
出血傾向を強める可能性があります。
(成分の例)
- セイヨウトチノキ種子エキス
男子強壮保健薬
- 金蛇精
■相談すること
抗凝固剤「ワルファリンカリウム」を服用している人
整腸薬
整腸薬の中には、「納豆菌」を含有するものがあります。
(含まれている成分の例)
- 納豆菌
- ビオナットミン
- 糖化菌
医療用医薬品の整腸薬には、納豆菌を含有する薬はありませんが、市販薬には、納豆菌を含有するものがあります。一緒に配合されている善玉菌の増殖を助け、悪玉菌が増殖しにくい環境を整える(酢酸や乳酸をつくり、腸内の pH を酸性に傾けるため)ことで、腸内の環境を整えます。
(注意)直接「納豆」とは書いていない場合もあります。「ビオナットミン」「糖化菌」と書いてあるものも、「納豆菌」のこと、と判断して構いません。
覚えられない!と思っても、大丈夫です。
「相談すること」の欄に、「ワルファリンをのんでいるかた」と書いているので、そこで見つけることができます。
ヒヤリ・ハット事例でも報告されています。
瀉下薬
瀉下薬(緩下薬)の中には、「納豆菌」を含有するものがあります。
鎮痛薬
ワルファリンと相互作用を起こし、ワルファリンの血中濃度を上昇させる可能性があります。
(含まれている成分の例)
- イブプロフェン
膣カンジダ(内用薬・外用薬)
(含まれている薬効成分の例)
- オキシコナゾール硝酸塩
- ミコナゾール硝酸塩
注意すべき健康食品・サプリメント
クロレラ・青汁
クロレラや青汁は、ビタミン K を大量に含んでおり、ワルファリンの薬効を減少させる可能性があるため、ワルファリン服用中は、摂取してはいけません。
グルコサミン
ワルファリンと相互作用を起こす可能性があると報告されています。
総合ビタミン剤
総合ビタミン剤は、非常にたくさんの種類があり、中には、ビタミン K もふうまれているマルチビタミンもあります。
ビタミン K を急にたくさん取ると、ワルファリンの薬効が減少する可能性があります。
ビタミン K を含まないものであれば、摂取可能、とはなるのですが、非常にたくさんの製品があるので、ここでは断定を避けさせてください。
セントジョーンズワート
サプリやお茶があります。ワルファリンの血中濃度を上昇させる可能性があります。
など
ここに挙げていない食品でも、ワルファリンとの相互作用が報告されているものもあります。
今後も、ワルファリン服用中の患者及び家族・介護者には、購入前に相談してください、と呼びかけることに加え、
全ての購入者に対して、市販薬でも購入時にはお薬手帳を持参するように呼び掛けたいところです。
おわりに
ワルファリン服用中の方は、長期治療が必要なことに加えて、症状モニタリングや併用薬の管理など、非常に負担が大きいです。
少しでも負担の支えになり、治療アドヒアランスを高めるために、薬剤師として支援したいものです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。