第2章 医薬品の購入・販売・授与

第2章 医薬品の購入・販売・授与

【 医療安全の確保へ向けた視点 】

 医薬品の発注、納品ミスが医療事故の原因となっているケースも見受けられる。正確な発注と納品を確保するため、医薬品の品目・規格などの確認手順を定め、発注、納品の記録の管理を行うことが必要である。
 また、医薬品の偽造品等の不適正な医薬品の流通防止対策についても記載すること。

【 手順書を定めることが望ましい事項 】

1. 卸売販売業者への医薬品の発注

○ 医薬品の正確な発注
・商品名、剤形、規格単位、数量、包装単位、メーカー名
○ 発注した品目と発注内容の記録・保管

2. 卸売販売業者からの入庫管理と伝票管理

○ 発注した医薬品の検品
  • 商品名、数量、製造番号と現品との照合を行い、納品伝票等を保管
  • 商品名、剤形、規格単位、数量、包装単位、メーカー名、使用期限年月日、目視できるような損傷の有無、開封の有無
  • 発注記録との照合(GS1 コードの照合等)
  • 特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)に注意
○ 発注した医薬品の返品の際の取扱い
○ 規制医薬品(麻薬、覚せい剤原料、向精神薬(第1種、第2種)、毒薬・劇薬)の管理
  • 薬機法並びに麻薬及び向精神薬取締法の遵守
  • 商品名、数量、製造番号と現品との照合を行い、納品伝票等を保管
  • 麻薬、覚せい剤原料については譲渡証の記載事項及び押印を確認し、2 年間保管
○特定生物由来製品の管理
  • 納品書を保管し、製剤ごとに規格単位、製造番号、購入量、購入年月日を記載して管理
○販売業者の確認
  • 医薬品の偽造品等の不適正な医薬品の流通防止対策として、譲渡人が信頼のおける業者であることを確認する。

3. 医薬品の販売・授与

○ 薬局間の医薬品の販売・授与
・記録及び管理の徹底
相手方の薬局(譲渡人・譲受人)の確認
医薬品の確認
書面への記載事項・ 保存期間の確認
譲受・譲渡の手段・場所の確認
開封した医薬品の譲受・譲渡の方法
麻薬小売業者間での麻薬の譲受・譲渡の方法
○ 一般用医薬品等の販売・授与に関連した対応
・一般用医薬品等の管理、販売時の情報提供方法等

4. 偽造医薬品の流通防止に向けた対策

○ 偽造医薬品を発見した際の具体的な手順
・仕入れの経緯の確認、販売・輸送の中断、他と区別した保管、行政機関等への報告
○ 偽造医薬品の流通防止に向け、医薬品取引状況の継続的な確認・自己点検
○ 管理者の責任において行う業務の範囲
・購入者等の適切性の確認
・回収された医薬品の取扱いに係る最終的な判断 等
 

【 細目】

2. 卸売販売業者からの入庫管理と伝票管理2024/3/21 9:432024/3/21 10:37

【 根拠法令 】

第十四条(医薬品の購入等に関する記録)
第十四条 薬局開設者は、医薬品を購入し、又は譲り受けたとき及び薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設(獣医療法(平成四年法律第四十六号)第二条第二項に規定する診療施設をいい、往診のみによつて獣医師に飼育動物の診療業務を行わせる者の住所を含む。以下同じ。)の開設者に販売し、又は授与したときは、次に掲げる事項(第二号及び第三号に掲げる事項にあつては、当該医薬品が医療用医薬品として厚生労働大臣が定める医薬品(以下「医療用医薬品」という。)(体外診断用医薬品を除く。)である場合に限る。)を書面に記載しなければならない。
一 品名 二 一の製造期間内に一連の製造工程により均質性を有するように製造された製品の一群に付される番号(以下「ロツト番号」という。)(ロツトを構成しない医薬品については製造番号) 三 使用の期限 四 数量 五 購入若しくは譲受け又は販売若しくは授与の年月日 六 購入若しくは譲り受けた者又は販売若しくは授与した者(以下「購入者等」という。)の氏名又は名称、住所又は所在地及び電話番号その他の連絡先(次項ただし書の規定により同項に規定する確認を行わないこととされた場合にあつては、氏名又は名称以外の事項は、その記載を省略することができる。) 七 前号に掲げる事項の内容を確認するために提示を受けた資料(次項ただし書の規定により同項に規定する確認を行わないこととされた場合を除く。) 八 購入者等が自然人であり、かつ、購入者等以外の者が医薬品の取引の任に当たる場合及び購入者等が法人である場合にあつては、医薬品の取引の任に当たる自然人が、購入者等と雇用関係にあること又は購入者等から医薬品の取引に係る指示を受けたことを示す資料
2 薬局開設者は、前項の規定に基づき書面に記載するに際し、購入者等から、薬局開設、医薬品の製造販売業、製造業若しくは販売業又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設の許可又は届出に係る許可証又は届書の写し(以下「許可証等の写し」という。)その他の資料の提示を受けることで、購入者等の住所又は所在地、電話番号その他の連絡先を確認しなければならない。ただし、購入者等が当該薬局開設者と常時取引関係にある場合は、この限りではない。
3 薬局開設者は、薬局医薬品、要指導医薬品又は第一類医薬品(以下この項において「薬局医薬品等」という。)を販売し、又は授与したとき(薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者に販売し、又は授与したときを除く。第五項及び第六項並びに第百四十六条第三項、第五項及び第六項において同じ。)は、次に掲げる事項を書面に記載しなければならない。
一 品名
二 数量
三 販売又は授与の日時
四 販売し、又は授与した薬剤師の氏名並びに法第三十六条の四第一項若しくは第三十六条の六第一項の規定による情報の提供及び指導又は法第三十六条の十第一項の規定による情報の提供を行つた薬剤師の氏名
五 薬局医薬品等を購入し、又は譲り受けようとする者が、法第三十六条の四第一項若しくは第三十六条の六第一項の規定による情報の提供及び指導の内容又は法第三十六条の十第一項の規定による情報の提供の内容を理解したことの確認の結果
4 薬局開設者は、第一項の書面を、記載の日から三年間、前項の書面を記載の日から二年間、保存しなければならない。
5 薬局開設者は、第二類医薬品又は第三類医薬品を販売し、又は授与したときは、次に掲げる事項を書面に記載し、これを保存するよう努めなければならない。
一 品名
二 数量
三 販売又は授与の日時
四 販売し、又は授与した薬剤師又は登録販売者の氏名及び法第三十六条の十第三項の規定による情報の提供を行つた薬剤師又は登録販売者の氏名
五 第二類医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者が、法第三十六条の十第三項の規定による情報の提供の内容を理解したことの確認の結果
6 薬局開設者は、医薬品を販売し、又は授与したときは、当該医薬品を購入し、又は譲り受けた者の連絡先を書面に記載し、これを保存するよう努めなければならない。
 

麻薬小売業者

麻薬及び向精神薬取締法 第二条(用語の定義)
(用語の定義)
第二条
十七 麻薬小売業者 都道府県知事の免許を受けて、麻薬施用者の麻薬を記載した処方せん(以下「麻薬処方せん」という。)により調剤された麻薬を譲り渡すことを業とする者をいう。
麻薬及び向精神薬取締法 第二十四条(譲渡し)・・・麻薬小売業者間は許可の元、譲渡可能
(譲渡し)
第二十四条 麻薬営業者でなければ、麻薬を譲り渡してはならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
11 麻薬小売業者は、麻薬処方せん(第二十七条第三項又は第四項の規定に違反して交付されたものを除く。)を所持する者以外の者に麻薬を譲り渡してはならない。
12 前項の規定は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める者の許可を受けて譲り渡すときは、適用しない。
 麻薬小売業者が他の麻薬小売業者に麻薬を譲り渡す場合 都道府県知事
 前号に掲げる場合以外の場合 厚生労働大臣
麻薬及び向精神薬取締法 第三十八条・・・帳簿の記載事項
第三十八条 麻薬小売業者は、麻薬業務所に帳簿を備え、これに次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 譲り受けた麻薬の品名及び数量並びにその年月日
二 譲り渡した麻薬(コデイン、ジヒドロコデイン、エチルモルヒネ及びこれらの塩類を除く。)の品名及び数量並びにその年月日
三 第三十五条第一項の規定により届け出た麻薬の品名及び数量
四 廃棄した麻薬の品名及び数量並びにその年月日
 麻薬小売業者は、前項の帳簿を、最終の記載の日から二年間、保存しなければならない。

【 参考資料 】

3. 医薬品の販売・授与

厚生労働省
 
日本薬剤師会、日本保険薬局協会、日本チェーンドラッグストア協会:「薬局間における医療用医薬品の譲受・譲渡に関するガイドライン」、平成29年3月31日
 

4. 偽造医薬品の流通防止に向けた対策

厚生労働省
偽造医薬品流通防止に向けた取組~卸売販売業者、薬局等が遵守すべき事項をルール化しました(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179749.html
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正 する省令等の施行について」、薬生発 1005 第1号医薬・生活衛生局長通知(施行通知) https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000904882.pdf
業務手順書に盛り込むべき事項
(1) 薬局開設者の業務手順書に盛り込むべき事項
1 医薬品の譲受時は、納品された製品が正しいこと、目視できるような損傷を受けていないことなどを確認すること。
2 偽造医薬品の混入や開封済みの医薬品の返品を防ぐための、返品の際の取扱い。
3 貯蔵設備に立ち入ることができる者の範囲と立ち入る際の方法。(第4の1 参照)
4 医薬品の譲渡時は、全ての供給品において、第2の1(1)1から6までに掲げる事項等(一般用医薬品等については、同2及び3において掲げる事項を除く。)を記載した文書(例えば、納品書)を同封すること。
5 製造販売業者により医薬品に施された封を開封して販売・授与する場合(調剤の場合を除く。)には、医薬品の容器等に、当該分割販売を行う者の氏名又 は名称並びに分割販売を行う薬局の名称及び所在地を記載すること。
6 患者等に対して販売包装単位で調剤を行う場合には、調剤された薬剤が再度流通することがないよう、外観から調剤済みと分かるような措置を講じること。
7 偽造医薬品や品質に疑念のある医薬品を発見した際の具体的な手順(仕入れの経緯の確認、販売・輸送の中断、隔離、行政機関への報告等)。
8 その他、偽造医薬品の流通防止に向け、医薬品の取引状況の継続的な確認や自己点検の実施等。
9 購入者等の適切性の確認や返品された医薬品の取扱いに係る最終的な判断等、管理者の責任において行う業務の範囲。
(2)  店舗販売業者の業務手順書に盛り込むべき事項
1 医薬品の譲受時は、納品された製品が正しいこと、目視できるような損傷を受けていないことなどを確認すること。 2 偽造医薬品の混入や開封済みの医薬品の返品を防ぐための、返品の際の取扱い。 3 貯蔵設備に立ち入ることができる者の範囲と立ち入る際の方法。(第4の1参照) 4 医薬品の譲渡時は、全ての供給品において、第2の1(2)1から4までに掲げる事項等を記載した文書(例えば、納品書)を同封すること。 5 製造販売業者により医薬品に施された封を開封して販売・授与する場合には、医薬品の容器等に、当該分割販売を行う者の氏名又は名称並びに分割販売を行う店舗の名称及び所在地を記載すること。 6 偽造医薬品や品質に疑念のある医薬品を発見した際の具体的な手順(仕入れの経緯の確認、販売・輸送の中断、隔離、行政機関への報告等)。 7 その他、偽造医薬品の流通防止に向け、医薬品の取引状況の継続的な確認や自己点検の実施等。 8 購入者等の適切性の確認や返品された医薬品の取扱いに係る最終的な判断等、管理者の責任において行う業務の範囲。
(3)  配置販売業者の業務手順書に盛り込むべき事項
1 医薬品の譲受時は、納品された製品が正しいこと、目視できるような損傷を受けていないことなどを確認すること。 2 偽造医薬品の混入や開封済みの医薬品の返品を防ぐための、返品の際の取扱い。 3 偽造医薬品や品質に疑念のある医薬品を発見した際の具体的な手順(仕入れの経緯の確認、販売・輸送の中断、隔離、行政機関への報告等)。 4 その他、偽造医薬品の流通防止に向け、医薬品の取引状況の継続的な確認や自己点検の実施等。 5 販売者等の適切性の確認や返品された医薬品の取扱いに係る最終的な判断等、管理者の責任において行う業務の範囲。
「偽造医薬品の流通防止に係る省令改正に関するQ&Aについて」、事務連絡、平成 30 年1月 10 日.https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000904882.pdf