【補足】1-4 薬の投与経路と特徴(まとめ)

基礎において、重要な部分なので、説明を置いときます。 各投与経路とその薬物動態の特徴について、簡単に一覧にまとめています。 ・初回通過効果の有無 ・作用発現部位:局所作用を目的としているか・全身作用を目的としているのか ・作用持続時間 の特徴を理解することが重要です。
詳細は、後述します。
 

経口投与

全身循環血液中に移行した後の過程(DME)については、どの投与経路も同様ですが、吸収から移行までの過程が、それぞれに特徴的です。

経口投与

非常に簡便で安全性に優れた投与経路であり、広く使われています。
特徴については、1-3 で詳細に説明しているので、そちらを参照してください。
特徴としては、
◯胃を通過する
・食事が薬効に影響する →そのため、薬物によって服用タイミングが指定されています。
(詳しい解説)
・食事後では胃内容物排出速度が低下する
→ 通常の薬は吸収遅延
輸送担体の影響を受ける薬物ではゆっくりだと、取りこぼしが少なく吸収されるので吸収量が増大する
・食事後には胃酸分泌が促進される
・胃酸の影響を受ける →薬物によっては影響を受けないように製剤加工されています
◎初回通過効果をうける
小腸で吸収された後、全身循環血液中に移行する前に肝臓を通る。このとき、小腸粘膜や肝臓で、代謝を受ける。
[解説]初回通過効果 投与された薬物が全身循環血液中に移行する前に受ける影響(分解・代謝)のこと。
特に、肝臓での初回通過効果が重要なので、それを指して「肝初回通過効果」ともいう。
(参照)初回通過効果の影響が大きい薬はどうしたら良いか?
内服では初回通過効果が大きいため、効果が期待できない薬の場合、注射薬や坐剤・皮膚など他の投与経路が用いられる。
臨床で遭遇する事項
「飲めない」時にはどうしたら良いのか?
①大きい錠剤が飲めない
→剤型変更できないか?
→半割・粉砕できないか?
特別な製剤(腸溶錠や徐放錠など)の場合、加工不可の場合がある
②口から飲めない
→経腸栄養チューブから投与する
簡易懸濁法 等
正しく服用する
  • コップ一杯の水・白湯で
  • 服用時間
    • 食前・食後・食間

舌下投与

舌下投与・・・【剤型】舌下錠、舌下スプレー 等
舌下投与とは、薬剤を舌下に入れ、そこで溶けて、口腔粘膜から吸収される投与経路。
全身作用を目的とした投与経路です。
特徴としては、
◯非常に迅速に吸収される投与経路である
◯肝初回通過効果を受けない
ことが特徴的です。
 
早く効く
早く効くため、発作を和らげるために有用な投与経路と言えます。
例えば、狭心症発作の治療薬であるニトログリセリンの投与に用いられます。
 
肝初回通過効果を受けない
例えば、ニトログリセリンは、経口投与すると、半分は肝初回通過効果を受けます。舌下投与することで、肝初回通過効果を受けずに、必要な量の薬を届けることができます。
つまり、舌下投与すべき薬を、噛み砕いて嚥下すると、経口投与となり肝初回通過効果を受けます。→必要な量の薬が吸収されません。
舌下投与の薬を、噛んだり・飲み込んではダメ
初回通過効果が大きい薬剤も舌下投与では使用可能です。誤って嚥下すると、初回通過効果を受け、薬効が大きく失われることがあります。
 
 
 
 
臨床で遭遇する事項
以下のようなことがある患者さんの場合、舌下投与には注意が必要です。
 
口渇
高齢者など、口渇の場合、薬剤が崩壊しないため、薬効発現に時間がかかる可能性があります。 →くすりが効かない!
(対策)この場合、先に一口水をのんで潤してから使用すると改善が期待できます。それも難しい場合は、スプレー剤などの検討も必要となります。
 
舌根沈下
舌下に薬剤を置くことができない場合があります
(対策)バッカルなど別の投与経路を検討
(参考)バッカル投与
バッカル部位・・上奥歯の歯茎の部分と頬の間。ここに薬剤を置いておくと、薬剤が溶けて吸収されます。
 
 

直腸内投与

直腸内投与・・・【剤型】坐剤・浣腸など
直腸内投与は、直腸内に薬剤を挿入し、そこで作用を発現(局所作用)、もしくは、吸収されて全身作用を発現する投与経路です。
特徴としては、下記の事項があります。
◯消化管内における分解を回避することができる
◯直腸下部で吸収された場合、肝初回通過効果を受けずに、全身循環血液中に移行する
(直腸上部の場合、下腸間膜静脈を通り、門脈から肝臓を通る)
◯経口投与よりも、効果発現が早い
小児や高齢者で、経口投与が難しい場合に、坐剤が利用されます。
(制吐薬や抗てんかん薬など)
 
坐剤は「suppository」なので、臨床現場では「サポ」と呼ばれることもあります。
 
臨床で遭遇する事項
「座薬」との誤解
よくある誤解として「座って飲む薬」と誤解されることがあります。座って口から飲むと、薬は肝初回通過効果を受けるため、薬効が減弱する上、効果発現も遅くなります。
挿入後に出てきたらどうする?
  • でてきにくい挿入方法
    • 内肛門括約筋を通過するように深く挿入する
    • 挿入したら、ゆっくり足を伸ばす姿勢をとる(肛門括約筋が収縮するので出てきにくい)
    • 乳児の場合は、挿入後、足を伸ばして縦抱きする
  • 基本的な考え方:個別に確認が必要です!
    • 挿入直後に出てきた場合(薬の形は残っている)
      • 再度挿入する
    • 挿入後、10分以上経過してから出てきた場合
      • 坐薬の形が溶けている場合や、10分以上経過している場合、薬の成分はすでに溶けて吸収されている可能性が高いので、再挿入はせずに、様子を見る
      • 半分再挿入などの指示が出ている場合、指示通りに

経皮投与

経皮投与・・・【剤型】経皮投与型製剤(TTS)‥貼付(テープ)剤、ジェル剤など
湿布剤のように局所作用を目的として、皮膚に貼付する製剤もありますが、
全身作用を目的として使う投与経路でもあります(ニトログリセリン製剤、女性ホルモン、アルツハイマー型認知症治療薬、麻薬性鎮痛薬など)。薬物が持続的に放出されるため、長時間にわたって薬効が得られるメリットの他、認知症治療薬の場合は、介護者が薬の管理をしやすい、というメリットもあります。
特徴
長時間薬効が持続する
皮膚から吸収されて血管に移行し、全身循環血液をめぐります。
特に貼付剤は、貼付剤から徐々に薬物が放出されるために、持続的に効果が持続することが特徴的です。
◯肝初回通過効果を受けない
また、内服が困難な場合でも、補助者が管理しやすい剤型でもあるので、アルツハイマー型認証治療薬の場合、メリットとなることがあります。
注意事項としては、
◯皮膚刺激への対策が必要
スキンケアの指導に加え、毎回同じところに貼るのではなく、貼付部位を変えて貼ることを指導する必要があります。剥がし方も、入浴後に剥がしたり、皮膚を抑えながら剥がすことも重要です。
また、皮膚刺激(かぶれやすさ)については、後発医薬品では基剤が異なるので、かぶれやすさも製品毎につがいます。剥がれやすさも違います。
◯AED 使用時の注意点
貼付剤のうち、基剤に金属が含んでいる製剤には、注意が必要です。金属を含む貼付剤を貼ったまま、AED を使用すると、火傷が起こる可能性があります。
ただし、緊急時に、貼付剤が金属が含まれているかどうか調べる余裕はありません。AED 使用前には、貼付剤が貼られていないことを確認し、貼付されていれば、製剤の種類には関係なく、剥がす、というように、指導されます。
(補足)金属を含む貼付剤や軟膏は、MRI 検査の時にも注意が必要です。事前に剥がし、貼付・塗布部位を拭く必要があります。
◯貼付部位
経皮吸収型製剤の貼付部位は、胸部・腹部・背部・上腕部などが用いられます。製剤ごとに、貼付部位ごとに吸収される薬の量に違いがないことを確認した上で用いられています。
中には、「背部には貼付不可」というものもありますので、個別に確認することが重要です。
(例)フェンタニル:背部には貼付不可(高温になると薬物の吸収が亢進するため)
臨床で遭遇する事項
貼付部位のかぶれ
AED・MRI
(基本的な考え方)支持体に金属が含まれる場合は、事前にはがさなければならない(火傷する)
ただし、緊急時の AED の際は、胸に貼付剤がある場合は剥がす(金属含有の有無は確認せず、剥がす)
途中で剥がれたらどうするか?
  • 再貼付する場合
    • 剥がれた製剤を再貼付するか、新しい製剤を貼付するのかは、その製剤によって異なります
  • 再貼付しない場合
    • 一定の時間が経過しており十分な薬剤量が吸収されていると判断できる場合は、再貼付しなくても大丈夫です
    • ただし、はがれやすい原因を特定し、必要な対策を講じることは大切です(貼付部位の工夫、サポーターの使用など)
半分に切っても良いか?
投与経路毎の特徴を、図に示しています。
注射剤の特徴
◯作用発現が早い
注射剤では、高濃度の薬剤を素早く組織に到達させることができるため、短時間で血中濃度をあげることができ、作用発現までの時間が短いことが非常に特徴的です。
◯持続的に効果を得ることもできる
持続投与することで、長時間一定の血中濃度を維持することも可能です。
◯大量投与が可能
栄養補給、水分補給、電解質異常の治療などに大量投与することが可能です。
◯経口投与困難なときでも可能
◯初回通過効果の影響を受けない
注意点
◯効果が得られやすいが、副作用も発現しやすい
◯保管上、注意を要するものが多い:遮光・温度管理・保存条件など
◯痛みを伴う
◯安定性に注意を要するものが多い
◯血管外組織への投出により組織の壊死などを生じることがある:特に、殺細胞性抗癌薬
配合変化に注意が必要
溶解補助剤を加えることで溶解性や安定性を向上させている製剤の場合、輸液などとの混合によって化学的変化が起こり、着色・沈澱。分解が起こる場合があります。
(※)詳細は、輸液製剤の単元で説明します。
◯輸液セットとの組み合わせに注意が必要な場合がある
輸液セットなどに成分が吸着したり、輸液セットから可塑剤が溶出したりすることがあります。
◯無菌製剤を用いる
直接血管内に注入するため、注射剤は無菌製剤であり、注射器・注射針も滅菌処理(または、滅菌処理されたディスポ製品)が必要。
(参考)なお、注射剤の他に無菌製剤であるものに、点眼剤がある。
 
投与経路毎に、投与できる薬液の特徴も異なるため、薬剤によっては薬液のラベルに投与経路の指示があります。
臨床で遭遇する事項
誤薬
注射薬は、誤薬が発生した時に、重大な事象が、すぐに起こる危険性が高いです。そのために、事故が起こらないような工夫を、普段から心がけることが重要です。
 
○情報の確認
アレルギー歴・禁忌
(例)アナフィラキシーショックの頻度が高い薬に、ペニシリン系抗菌薬などがあります。与薬前には、必ず、アレルギー歴がないかを確認することが重要です。
 
○点滴静脈内注射中の患者の観察
点滴開始時・5分後・15分後
アナフィラキシー
静脈炎
皮下水腫・血腫
殺細胞性抗癌薬など、特に、漏出に必要な薬があります
 
○使用するルート
輸液キット
  • 与薬時に使用する輸液キットが指定されている場合、必ず指示通りにしてください。
  • 投与する薬剤の種類によっては、輸液キットの可塑剤(DEHP)が溶出する可能性があります。
インラインフィルター
  • インラインフィルターを使用してはいけない薬がある
    • 脂肪乳剤
    • アルブミン製剤
    • フィルターに詰まりやすい薬など(懸濁・粘度が高い・分子量が大きいなど)
作用発現時間は早い順に、
静脈内注射>>筋肉内注射>皮下注射>皮内注射
効果の持続性は、持続性の高いものから、
皮内注射>皮下注射>筋肉内注射>静脈内注射
と言われています。
 
<筋肉内注射と皮下注射>
  • 筋肉内注射
筋肉組織は血管が豊富であるため、皮下注射よりも作用発現時間は早いと言われています。筋注の作用発現時間は、通常、5~20分後。
また、筋肉内注射では、投与した薬液も迅速に希釈されるため、刺激性のある薬液(非等張液、粘稠液、懸濁液など)でも投与可能です。
  • 皮下注射
皮下注射では、投与できる薬液量が少量であり、等張液など刺激性のない薬液でないと投与することはできません。
 
実際の注射剤を見ると、どのルートから使用するか記載されています。
こちらで示したように、投与ルートによって、投与できる薬液は違います(末梢静脈と中心静脈の違いは「輸液」の項目で説明)。正しいルートから投与することが重要です。
まとめ 投与経路ごとの特徴を理解しておきましょう PK の特徴として最低限押さえるべきポイント ・作用発現時間の速さ ・作用持続時間の長さ ・どこで作用を発揮するのか