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アンタゴニスト

ひとことで

アンタゴニストは、受容体に結合しても通常はその受容体のスイッチを入れず、アゴニストによる反応を妨げる物質です。受容体を介する体の反応を弱めることで、治療効果を生みます。

もう少し詳しく

受容体には、神経伝達物質やホルモンなどのアゴニストが結合し、生体反応を起こします。アンタゴニストは同じ受容体または受容体の別の部位に結合し、アゴニストの結合や受容体の活性化を妨げます。
アンタゴニスト ↓ 受容体に結合 ↓ アゴニストが結合・作用しにくくなる ↓ 受容体を介する細胞内シグナルが弱まる ↓ 臓器の反応が抑えられる ↓ 治療効果または副作用として患者に現れる
アンタゴニストは、一般に受容体への親和性を持ちますが、それ自体で受容体を活性化する内活性は持たない、またはほとんど持たないと考えます。
ただし「遮断薬」という名称の薬が、すべて受容体アンタゴニストとは限りません。イオンチャネル、酵素、トランスポーターを阻害する薬もあるため、何を遮断しているかを確認することが重要です。

競合的アンタゴニスト

アゴニストと同じ結合部位を取り合います。
競合的アンタゴニストが存在 ↓ 同じ濃度のアゴニストでは反応が小さくなる ↓ アゴニスト濃度を十分に上げると、反応を回復できる場合がある
用量反応曲線では、典型的には曲線が右へ移動し、最大反応は保たれます。

非競合的アンタゴニズム

アゴニストと異なる部位に結合して受容体の働きを変える場合や、不可逆的に受容体を占有する場合などがあります。
アゴニストを増やしても作用を十分に回復できず、最大反応が低下することがあります。

可逆的・不可逆的

  • 可逆的:受容体との結合が外れ得る
  • 不可逆的:受容体との結合が長く残り、作用回復に新しい受容体の合成などが必要になる場合がある
臨床で使う多くの薬は、濃度、結合の強さ、作用時間などを含めて理解します。

なぜ重要?

アンタゴニストを理解すると、薬の作用を「何を止めるか」から考えられます。
  • どの受容体が遮断されるか
  • その受容体は通常、どの臓器で何をしているか
  • 遮断すると、どの生理反応が弱まるか
  • その変化が治療効果になるのはどの病態か
  • 必要な生理反応まで抑えると、どの副作用が起こるか
「アンタゴニスト=悪い作用を止める薬」と単純に考えないことが大切です。同じ受容体の働きでも、病態では抑えたい一方、別の臓器や状況では必要なことがあります。

薬との関係

例1:β遮断薬

心臓のβ1受容体を遮断 ↓ 交感神経による心拍数・心収縮力の上昇を抑える ↓ 心臓の負担や心筋酸素需要が減る ↓ 高血圧、心不全、不整脈などの治療につながる
関連薬効群:💊β遮断薬
遮断が強すぎると、徐脈、低血圧、倦怠感などが現れることがあります。

例2:ARB

AT1受容体を遮断 ↓ アンジオテンシンIIによる血管収縮とアルドステロン分泌が弱まる ↓ 血圧や体液量が下がる方向に働く ↓ 心臓・腎臓への負担を減らす
関連薬効群:💊ARB
低血圧、腎機能変化、高K血症などは、作用機序から予測できる変化です。

例3:MRA

ミネラルコルチコイド受容体を遮断 ↓ アルドステロンによるNa・水貯留を抑える ↓ 体液量や心臓への負担を減らす方向に働く
関連薬効群:💊MRA
K排泄も減るため、高K血症に注意します。

例4:抗コリン薬

ムスカリン受容体を遮断 ↓ 副交感神経による気管支収縮や分泌を抑える ↓ 気管支が広がり、呼吸症状の改善につながる
口渇、排尿困難、眼症状などは、ムスカリン受容体遮断から考えられます。

考えてみよう

問い

β遮断薬で心拍数が下がるのはなぜでしょうか。また、作用が強すぎるとどのような患者の変化が起こるでしょうか?

解説

心臓のβ1受容体は、交感神経の刺激を受けて心拍数や心収縮力を上げます。β遮断薬がこの受容体を遮断すると、交感神経の信号が心臓へ伝わりにくくなります。
β1受容体を遮断 ↓ 心拍数・心収縮力の上昇を抑える ↓ 心臓の負担が減る ↓ 治療効果
遮断が強すぎる ↓ 心拍数や心拍出量が必要以上に低下 ↓ 徐脈、低血圧、めまい、ふらつき、倦怠感
このように、アンタゴニストの副作用の一部は「遮断した受容体が本来担っていた生理機能が、必要以上に抑えられた結果」として説明できます。

関連用語

比較のポイント:
項目アゴニストアンタゴニスト
受容体への結合するする
受容体の活性化する通常はしない
主な役割受容体反応を起こすアゴニストの反応を妨げる
反応が強すぎる場合過剰刺激による副作用過剰遮断による副作用
今後キーワードDBに追加する候補:
  • 親和性
  • 競合的アンタゴニスト
  • 非競合的アンタゴニスト
  • 可逆的結合
  • 不可逆的結合
  • 用量反応曲線

関連教材

関連するシミュレーターが登録されたら、アゴニスト濃度、アンタゴニスト濃度、受容体占有率、最大反応の変化を動かして確認します。
例:
  • アゴニスト/アンタゴニスト
  • 競合的阻害と非競合的阻害
  • 用量反応曲線
  • 自律神経受容体
  • β1受容体と心臓
  • ムスカリン受容体と気管支

参考資料

  • 標準的な薬理学・臨床薬理学の教科書
  • 受容体薬理学、用量反応関係に関する教育資料
  • 各受容体遮断薬の最新の電子添文・インタビューフォーム
  • PMDA等の公的医薬品情報