骨代謝
骨は一見静的に見えるが、常に骨吸収(古い骨の破壊)と骨形成(新しい骨の構築)を繰り返している(骨リモデリング)。このバランスが崩れると骨粗鬆症などの骨疾患が発症する。
骨リモデリングの全体像
| 過程 | 担当細胞 | 内容 |
|---|---|---|
| ① 活性化 | 骨細胞・骨芽細胞 | 微小損傷や力学的負荷を感知し、リモデリング開始のシグナルを発信 |
| ② 骨吸収 | 破骨細胞 | 古い骨を酸と酵素で分解・破壊(約2〜3週間) |
| ③ 逆転 | — | 骨吸収から骨形成への切り替わり(カップリング) |
| ④ 骨形成 | 骨芽細胞 | 新しい骨基質(オステオイド)を分泌し、石灰化 → 新しい骨を構築(約4〜6ヶ月) |
| ⑤ 休止 | 骨細胞 | 骨芽細胞の一部が骨基質内に埋まり骨細胞となる。次のリモデリングまで休止 |
骨形成の機序(骨芽細胞)
骨芽細胞(osteoblast)の働き
- 間葉系幹細胞から分化
- Wntシグナル経路が骨芽細胞の分化・活性化を促進(→ スクレロスチンがこれを抑制)
- 骨基質(オステオイド:I型コラーゲンなど)を分泌
- カルシウムとリン酸が沈着 → ハイドロキシアパタイト結晶として石灰化(骨の硬さの源)
- 役割を終えた骨芽細胞は、一部が骨基質内に埋まり骨細胞となる
骨形成を促進する因子
- Wntシグナル → 骨芽細胞分化促進(→ スクレロスチンが抑制)
- PTH(間歇的投与) → 骨芽細胞活性化
- エストロゲン → 骨芽細胞のアポトーシス抑制
- ビタミンD → 骨芽細胞の分化支援
- 機械的負荷(運動) → 骨形成促進
骨吸収(骨破壊)の機序(破骨細胞)
破骨細胞(osteoclast)の働き
- 単球・マクロファージ系の前駆細胞から分化(多核巨細胞)
- 分化にはRANKLとM-CSFが必要
- 骨芽細胞がRANKLを発現 → 破骨細胞前駆細胞のRANK受容体に結合 → 破骨細胞の分化・活性化・生存を促進
- 活性化された破骨細胞が骨表面に接着し、封鎖帯(sealing zone)を形成
- 封鎖帯内にH⁺(塩酸)を分泌 → 骨の無機質(ハイドロキシアパタイト)を溶解
- カテプシンK等の酵素を分泌 → 骨の有機質(コラーゲン)を分解
- 結果として骨が破壊・吸収される
RANKL-RANK-OPGシステム(骨吸収の調節)
骨吸収の調節機構
- RANKL(骨芽細胞が発現):破骨細胞のRANK受容体に結合 → 破骨細胞の分化・活性化・生存を促進
- OPG(おとり受容体、骨芽細胞が分泌):RANKLと結合してRANKへの結合を阻害 → 破骨細胞の活性化を抑制
- つまりRANKL/OPG比が骨吸収の強さを決定
- RANKL↑/OPG↓ → 骨吸収亢進 → 骨量低下
- RANKL↓/OPG↑ → 骨吸収抑制 → 骨量維持
骨細胞の役割(指揮者)
骨細胞(osteocyte)
- 骨基質内に埋まった細胞(元骨芽細胞)。骨の細胞の約90〜95%を占める
- 細胞突起でネットワークを形成し、力学的負荷や微小損傷を感知(メカノセンサー)
- スクレロスチンを分泌 → Wntシグナルを抑制 → 骨形成のブレーキ
- RANKLも発現 → 破骨細胞の活性化を調節
- つまり骨細胞は骨形成と骨吸収の両方を調節する指揮者
骨代謝に関わる主要因子と薬剤の作用点
| 因子・標的 | 役割 | 関連薬剤 |
|---|---|---|
| RANKL | 破骨細胞の分化・活性化促進 | 抗RANKL抗体(デノスマブ)がRANKLを阻害 |
| メバロン酸経路(FPPS) | 破骨細胞の細胞骨格維持に必要 | ビスホスホネート製剤がFPPSを阻害 → 破骨細胞アポトーシス |
| スクレロスチン | Wntシグナル抑制 → 骨形成抑制 | 抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ)が阻害 → 骨形成促進+骨吸収抑制 |
| PTH | 間歇的投与で骨芽細胞活性化 | 副甲状腺ホルモン(PTH)製剤(テリパラチド)が骨形成促進 |
| エストロゲン受容体 | 骨では骨吸収抑制・骨芽細胞保護 | |
| ビタミンD | Ca吸収促進・骨芽細胞分化支援 | 活性型VitD3製剤がCa吸収を促進 |
| カルシウム | 骨の主要無機成分 | Ca製剤が原料を補給 |
骨粗鬆症でのバランスの崩れ
骨吸収 > 骨形成 の状態が続くと骨量が低下
- 閉経後:エストロゲン急減 → 破骨細胞のアポトーシス抑制が解除 → 骨吸収亢進
- 加齢:骨芽細胞の機能低下・VitD不足・Ca吸収低下 → 骨形成低下
- ステロイド長期使用:骨芽細胞のアポトーシス促進+Ca吸収低下 → 骨形成低下+骨吸収亢進
- 不動(床上安静):機械的負荷の消失 → 骨形成低下・骨吸収亢進