骨粗鬆症治療薬
骨粗鬆症治療薬
骨粗鬆症治療薬一覧
骨代謝調整薬
ビタミンK2製剤
- メナテトレノン
- グラケーカプセル:骨粗鬆症
- ケイツーシロップ:ビタミンK欠乏
活性型ビタミンD3薬
アルファカルシドール(アルファロール)
カルシトリオール(ロカルトロール)
カルシウム薬
L-アスパラギン酸カルシウム(アスパラ-CA)
リン酸水素カルシウム
骨吸収抑制薬
エチドロン酸(ダイドロネル錠200)
- 用法:2週間服薬→8〜10週間休薬
アレンドロン酸(フォサマック・ボナロン)
- [5mg錠]1日1回、毎日服用
- [35mg錠]1週間に1回
- [900μg点滴静注]4週間に1回
リセドロン酸(アクトネル錠)
- [2.5mg錠]1日1回、毎日服用
- [17.5mg錠]1週間に1回
- [75mg錠]月1回
ミノドロン酸(ボノテオ・リカルボン)
イバンドロン酸(ボンビバ)
女性ホルモン薬
SERM
抗RANKL抗体薬
- デノスマブ(遺伝子組換え)(Dmab)
- プラリア (R) 皮下注:骨粗鬆症・骨びらん(RA)
- ランマーク (R) 皮下注:がん
(適応症が違う2種類の製剤がある)
デノスマブ(遺伝子組換え)(プラリア (R) 皮下注)
- 効能又は効果:骨粗鬆症、関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制
- 用法:
- 〈骨粗鬆症〉デノスマブ(遺伝子組換え)として60mgを6ヵ月に1回、皮下投与
- 副作用:低カルシウム血症
- 対策:
沈降炭酸カルシウム・コレカルシフェロール・炭酸マグネシウム(デノタスチュアブル配合錠)
ビタミンD3誘導体
エルデカルシトール(エディロール錠/カプセル)
カルシトニン製剤
エルカトニン(エルシトニン (R) 注)
骨形成促進薬
PTH製剤
副甲状腺ホルモン
テリパラチド(遺伝子組換え)(フォルテオ (R) 皮下注キット)
- 効能・効果:骨折の危険性の高い骨粗鬆症
- 用法:1日1回、テリパラチド20μgを皮下注射
- 投与上限:24ヶ月間

テリパラチド酢酸塩(テリボン (R) 皮下注用)
- 効能・効果:骨折の危険性の高い骨粗鬆症
- 用法:1日1回、週2回(原則3〜4日間隔)、テリパラチド28μg皮下注射
- 投与上限:24ヶ月間

PTHrP(1-34)誘導体
ヒト副甲状腺ホルモン関連蛋白質(hPTHrP)
アバロパラチド酢酸塩(オスタバロ (R) 皮下注カートリッジ)
(患者向け)https://ostabalo-navi.jp
- 効能・効果:骨折の危険性の高い骨粗鬆症
- 用法:1日1回、アバロパラチド80μgを皮下注射
- 投与上限:18ヶ月間
インジェクターを使用して自己注射する


骨形成促進作用と骨吸収抑制作用を併せ持つ
抗スクレロスチン抗体
ロモソズマブ(遺伝子組換え)(イベニティ (R) 皮下注)
(患者さん向け)https://evenity-pts.jp
(医療者向け)https://www.evenity.jp
- 効能・効果:骨折の危険性の高い骨粗鬆症
- 用法:1ヵ月に1回、12ヵ月皮下投与
- 投与上限:12ヶ月間

治療薬の位置付け(イメージ)
- 骨粗鬆症:ビスホスホネート
- 閉経後骨粗鬆症:SERM
- 骨折リスクが高い骨粗鬆症:
- 抗RANKL抗体薬、PTH製剤、PTHrP(1-34)誘導体、抗スクレロスチン抗体
- ステロイド性骨粗鬆症
治療の継続
投与期間の上限
重症骨粗鬆症治療薬に用いる皮下注製剤に共通の事項
投与期間の上限:
抗RANKL抗体薬
- デノスマブ(遺伝子組換え)(プラリア (R) 皮下注)
PTH製剤
- テリパラチド(遺伝子組換え)(フォルテオ (R) 皮下注キット):投与期間の上限(24カ月間)
- テリパラチド酢酸塩(テリボン (R) 皮下注用):投与期間の上限(24カ月間)
PTHrP(1-34)誘導体
- アバロパラチド酢酸塩(オスタバロ(R) 皮下注カートリッジ):投与期間の上限(18カ月間)
抗スクレロスチン抗体
- ロモソズマブ(遺伝子組換え)(イベニティ(R) 皮下注):投与期間の上限(12カ月間)
投与上限期間を超えた後の治療は?
- 他の骨粗鬆症治療薬(骨吸収抑制薬)を継続することが重要
PTH
治療終了後、長期に治療を中断すると、再び骨折率が上昇する
PTH製剤の再開ではなく、他の骨粗鬆症治療を継続
オスタバロ
18ヶ月間の治療終了後は、医師の指示に従って他の骨粗鬆症治療薬による維持療法に移行
イベニティ
イベニティ12ヶ月で治療終了後、一過性に骨吸収が増加することが知られている
BP 製剤
投与開始後3〜5年後に治療効果を評価
経口BP製剤の場合、5年間服用後に、1年ほど休薬する場合がある
目的:長期使用による副作用(顎骨壊死や非定型大腿骨骨折など)のリスクを低減するため
ただし、ハイリスク患者では継続するメリットの方が大きい可能性もあるので、個別に判断される
閉経後骨粗鬆症 PMID: 37991856
治療開始後、1〜2年ごとにDXA
経口 BP 製剤
5年継続後に骨折リスク評価
- 低・中リスク:休薬期間・最大5年
- 高リスク:休薬期間・最大10年
静注 BP 製剤
3年継続後に骨折リスク評価
- 低・中リスク:休薬期間・最大5年
- 高リスク:休薬期間・最大6年
抗RANKL抗体薬
- デノスマブ(遺伝子組換え)(プラリア (R) 皮下注)
5〜10年継続後、骨折リスクを再評価→他剤切り替え(BP製剤)
休薬不可:治療中止すると、多発性椎体骨折リスクが上昇する可能性がある(治療期間が長いほど)
副作用
顎骨壊死
- BP製剤、Dmab
- 抗スクレロチン抗体
- 血管新生阻害薬(ベバシズマブ、デノスマブ)
- 免疫抑制薬(メトトレキサート、エベロリムス)
まれな副作用だが、発生すると重篤
侵襲的な歯科処置や局所感染と関連して生じるため、予防のためには、
- 歯科受診をするときには、服薬中であることを必ず伝える
- 普段から口腔清潔に努める
ことが重要である。
マルチモビディティの観点から
- [腎臓]
- CKD-MBD 腎機能低下と骨
- 腎機能が低下している人における骨粗鬆症治療薬の使い方
- BP製剤:腎排泄型
エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023

生活面からみた薬剤
食事
BP製剤
- 薬剤の吸収がわずかであるため、吸収が阻害されないように起床時に服用し、服薬後30分は、水以外は摂取不可
- 粘膜に炎症を引き起こす可能性があるため、服薬後、口腔内残薬がないかを確認することが重要
- 口腔や食道に炎症が起きると、食欲不振の原因になる可能性がある
食事が食べられない時
シックデイ
活性型ビタミンD3薬・ビタミンD3誘導体
- 高カルシウム血症から、急性腎障害 (AKI) を起こす可能性がある
- リスク因子:
- 高齢者や腎機能が低下している人では注意が必要
- エルデカルシトール
- 特に、高用量・高齢者には注意
- カルシウムサプリメントなどリスクになることから、自己判断で使用しているものはないか確認しておく
- 食事がとれないシックデイには、休薬の指示が出されることもあることから、普段から、シックデイ時の対応について確認しておく
転倒に注意
薬効群共通
- 転倒による骨折リスクがある
注射剤共通
- 転倒による骨折リスクが特に高い方に使われている
- 生活環境の整備など、骨折予防に努める
- 注射後に、一過性の血圧低下などが起こる可能性がある
- 注射後は、安静に過ごす
- 注射部位の痛みから、運動や食行動に支障をきたす可能性がある
- 対策:以下のような対策がとられることがある(注射剤ごとに確認)
- 注射部位
- 注射部位を冷やす
薬物治療について
- 総説
- FRAXなどのリスク予測モデルは臨床で広く用いられ、骨密度(BMD)測定と併用して治療方針決定に役立つ
- ビスホスホネート(アレンドロン酸など)は第一選択薬として推奨され続けている
- ロモソズマブ(抗スクレロスチン抗体)は骨形成促進と吸収抑制の二重効果を持ち、重症患者に有効
- デノスマブ(RANKL阻害薬)は骨折予防に高い効果を示すが、投与中断時の骨折リスク増大に注意
- 治療継続とモニタリングは、治療中断や再骨折予防の観点から極めて重要
- レビュー形式であるため、バイアスのある研究や不均一なエビデンスを含む可能性がある
- 各国における薬剤の使用可能性やコスト事情が異なるため、汎用性には限界がある
- 明確な治療目標の設定
- 例:骨密度(BMD)の改善、Tスコア≧−2.5の達成、骨折リスク(FRAX)の一定以下への低下など
- 定期的なモニタリング
- DXAによるBMD測定、骨代謝マーカー、薬剤反応の評価を定期的に行う
- 目標未達の場合の治療強化
- たとえば、ビスホスホネートで効果が不十分なら、ロモソズマブやテリパラチドなどのアナボリック薬への切り替えを検討
- 継続的な評価と調整
- 一度目標を達成しても、骨折や骨量減少が再発しないよう、継続的に再評価する
- 骨折予防の最大化
- 薬剤効果の早期評価
- 不適切な長期治療の回避(例:長期デノスマブ中断のリスク軽減)
Advances in the management of osteoporosis
Hoong CWS, Saul D, Khosla S, Sfeir JG. Advances in the management of osteoporosis. BMJ. 2025 Jul 30;390:e081250. doi: 10.1136/bmj-2024-081250. PMID: 40738610.
要約
Title(英語と日本語)
Advances in the management of osteoporosis
骨粗鬆症治療の進歩
Journal Name & Publication Year(雑誌名と発表年)
The BMJ, 2024年
First and Last Authors(第一著者と最終著者)
First: Nicholas C Harvey
Last: Cyrus Cooper
First Affiliations(第一所属)
MRC Lifecourse Epidemiology Centre, University of Southampton, UK
Abstract(要旨)
骨粗鬆症の予防・治療戦略は近年大きく進展している。リスク評価ツール(特にFRAX)と画像診断技術の向上により、早期診断と治療が可能になった。また、骨形成を促すアナボリック薬(ロモソズマブなど)や、骨吸収を抑制するデノスマブなど新しい薬剤が実用化され、骨折予防効果が強化されている。本総説では、最新の診断・治療法、ガイドラインの推奨事項、そして治療選択のためのリスク層別化手法について概説する。
Background(背景)
骨粗鬆症は世界で数億人に影響を及ぼし、特に高齢女性に多く、骨折による障害・死亡リスクが高い。適切な予防・治療によってその影響を大きく軽減可能である。
Methods(方法)
本論文はレビュー論文であり、近年の文献・臨床試験・ガイドラインを系統的に要約し、エビデンスに基づいた治療方針の進歩を整理している。
Results(結果)
Discussion(考察)
骨粗鬆症治療では、リスク層別化に基づく個別化治療が今後の鍵となる。骨密度のみならず、臨床的リスク因子、薬剤の特性、患者の嗜好を考慮することが推奨される。新薬の台頭により治療選択肢が拡大しているが、副作用やコストも考慮すべきである。
Novelty compared to previous studies(先行研究との新規性)
本レビューは、最新の薬剤選択アルゴリズム、長期管理戦略、薬剤切り替えの指針までを包括的にカバーしており、従来よりも臨床実践に即した内容となっている。
Limitations(限界)
Potential Applications(応用可能性)
臨床医が骨折リスクの高い患者を迅速に同定し、最適な治療を選択するためのガイドとして有用。公衆衛生政策においても、人口レベルでの骨折予防戦略に資する内容である。
表2. 2020年AAEC、2019/2020年BHOF、2022年NOGG、2022年IOF/ESCEO、2019年と2022年AAECの推奨事項の要約
TTT アプローチ
TTTアプローチ(Treat-to-Target approach)とは、明確な治療目標を設定し、それに向けて治療を調整・最適化していく医療戦略のことです。元々は高血圧や糖尿病、リウマチ治療で確立された概念ですが、近年では骨粗鬆症の管理にも適用されています。