分子標的薬
命名法(ステム)
分子標的薬の命名法2024/4/6 1:132024/4/6 1:14標的
作用機序
がん細胞を兵糧攻めにする
がん細胞を兵糧攻めにする
特徴
(がん細胞の特徴)異常に増殖するがん細胞自体に栄養を供給させるため、がん細胞は、血管新生を促している
(薬剤の特徴)血管新生に作用する過程を阻害する
(レジメンの特徴)他の抗がん薬と併用することで効果を上げる
血管新生阻害薬
作用機序:がん細胞増殖に必要な血管新生を抑制する ([抗体薬] 増殖スイッチOFF;[TKI] 増殖スイッチON後の信号伝達をOFF)
- 血管新生に必要なシグナル伝達
- リガンド:VEGF(血管新生因子)・・・がん細胞自らが放出する
- 受容体:VEGFR
- VEGFR-1, VEGFR-2, VEGFR-3 3種類がある。いずれも、受容体型チロシンキナーゼ
○抗体薬
VEGFとVEGFRの結合を阻害
抗VEGF抗体薬
・・リガンドに結合
抗VEGFR2抗体薬
・・受容体に結合する
○抗体薬(人工抗体)
VEGFとVEGFRの結合を阻害
VEGF阻害薬
・・リガンドに結合
○小分子薬
VEGFR-TKI
VEGFR のほかにも、種々のキナーゼを阻害する作用を持つことから、多標的阻害薬(マルチキナーゼ阻害薬)とも呼ばれる
がん細胞を増殖させない
がん細胞を増殖させない(細胞増殖のスイッチをオフにする)
(がん細胞の特徴)無秩序に増殖しつづける
がん細胞では、細胞増殖が常にオンになっている状態(正常な細胞は、必要な時だけ細胞増殖のスイッチがオンになる)
- 細胞増殖指令の伝達
- チロシンキナーゼ:最初のスイッチON
- チロシンキナーゼには、受容体型と非受容体型がある
- 受容体型チロシンキナーゼ(RTK)→シグナル伝達(MAPK経路、JAK/STAT 経路、PI3K/AKT 経路)
- RTK ファミリー:上皮成長因子受容体(EGFR)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)、Eph(エフリン受容体)、およびインスリン受容体など
- 非受容体型チロシンキナーゼ
- Srcファミリー、ABL、JAK、FAK
受容体型チロシンキナーゼ(RTK)
RTK は、受容体にリガンドが結合すると、キナーゼ(リン酸化酵素)が活性化され、細胞内にシグナルを伝える。RTK は、クラスⅠ〜Ⅴまである。
チロシンキナーゼ阻害剤は、細胞内へのシグナル伝達を抑制することで、がん細胞に細胞増殖のシグナル伝達を抑制することができる。
HER2 阻害薬
作用機序:がん細胞の増殖を抑制する ([抗体薬] 増殖スイッチOFF;[TKI] 増殖スイッチON後の信号伝達をOFF)
- HER(ヒト上皮成長因子受容体)
- HER1, HER2, HER3, HER4 の4つがある
- HER1=EGFR
- HER2
- バイオマーカー:HER2 過剰発現=抗HER2抗体薬が効く
- 正常組織では、心筋細胞に発現している →心毒性
抗HER2抗体薬
HER2チロシンキナーゼ阻害薬
EGFR 阻害薬
作用機序:がん細胞の増殖を抑制する ([抗体薬] 増殖スイッチOFF;[TKI] 増殖スイッチON後の信号伝達をOFF)
EGFR(上皮成長因子受容体)
EGFRは細胞膜受容体であり、細胞内領域にチロシンキナーゼ(TKI)領域を有している
- RAS 遺伝子変異
- RAS は、EGFR からの細胞内シグナル伝達を行うタンパク質
- 遺伝子として、KRAS, HRAS, NRAS の3種類がある
- RAS 遺伝子変異(KRAS, NRAS 変異)=EGFR への刺激がなくても、活性化しており、細胞増殖のシグナルが伝達されている RAS(KRAS, NRAS)遺伝子変異
- RAS 遺伝子変異がない=抗EGFR抗体薬は効く(EGFRがスイッチONできなくなる)
- RAS 遺伝子変異がある=抗EGFR抗体薬は効かない(EGFRがなくてもスイッチはONになっている)
抗EGFR抗体薬
EGFRチロシンキナーゼ阻害薬
KRAS阻害薬
EGFR からの細胞内シグナル伝達に関与する
FGFR 阻害薬
作用機序:がん細胞の増殖を抑制する ([抗体薬] 増殖スイッチOFF;[TKI] 増殖スイッチON後の信号伝達をOFF)
- リガンド:線維芽細胞増殖因子(FGF)
- 受容体:線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)
- FGFR 遺伝子異常
- FGFR遺伝子に異常が起こると、シグナル伝達が恒常的に活性化され、癌化及び癌の進行が促進される
- 胆道癌のうち、特に肝内胆管癌では、FGFR2融合遺伝子又はFGFR2遺伝子再構成の存在が確認されており、癌化及び癌の進行に関与するドライバー遺伝子であることが示唆されている
EGFRチロシンキナーゼ阻害
MET 阻害薬
作用機序:がん細胞の増殖を抑制する ([抗体薬] 増殖スイッチOFF;[TKI] 増殖スイッチON後の信号伝達をOFF)
- リガンド:肝細胞増殖因子(HGF)
- 受容体:MET(または c-MET)
METチロシンキナーゼ阻害
FLT3 阻害薬
作用機序:がん細胞の増殖を抑制する ([抗体薬] 増殖スイッチOFF;[TKI] 増殖スイッチON後の信号伝達をOFF)
- リガンド:FLT3 リガンド
- 受容体:FMS様チロシンキナーゼ3(クラスⅢチロシンキナーゼの一つ)
- FLT3 遺伝子変異・・急性骨髄性白血病(AML)で最も頻繁に確認される遺伝子変異
- FLT-ITD 変異・・ AML 患者の約 30%に見られる。予後不良
FLT3 チロシンキナーゼ阻害
細胞内シグナル伝達経路
- JAK/STAT 経路
細胞外からのサイトカイン調節の情報伝達に重要であり、細胞の増殖や分化・アポトーシスなどを調節している
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)
- がん細胞などにおいては、CDK が活性化しており、細胞分裂の制御ができない状態にある
- CDK4 及び CKD6 を阻害すると、細胞周期の進行を停止させ、抗腫瘍効果を発揮する
がん細胞の自死を誘う
がん細胞の自死を誘う(アポトーシスを誘導する)
(がん細胞の特徴)異常な細胞が無秩序に増殖しつづける →異常な細胞を自死に導くアポトーシスを作動させる
- プロテアソーム阻害
プロテアソーム阻害
- プロテアソームは細胞周期に重要な役割を果たしている
- プロテアソームは、細胞内で不要になり、目印が付加(ユビキチン化)されたタンパク質を分解する
- プロテアソームを阻害すると、不要になったタンパクが蓄積するため、がん細胞のアポトーシスが誘導される
- DNA 修復
DNA 修復
- DNA を修復する働きには、1本鎖切断を修復する PARP と、2本鎖切断を修復する BRCA がある
- PARP(poly ADP-ribose polymerase)は、DNA修復、細胞死および分化制御などに関与している
- DNA損傷のうち、1本鎖にエラーが起きた場合は、PARPが働いて、塩基除去修復が行われる
- DNA損傷のうち、2本鎖切断に対しては、BRCAなどが働いて、相同組み換え修復による修復が行われる
- BRCAに遺伝子変異がある場合:PARP を阻害すると DNA 修復できず、がん細胞はアポトーシスに導かれる
- エピジェネティクス標的薬
エピジェネティクス標的薬
- エピジェネティクスとは、DNA の塩基配列に依存せず、染色体の変化によって遺伝子の発現を制御する機構
- DNA のメチル化、ヒストンのアセチル化・メチル化
がん細胞を見つけて攻撃
がん細胞が持つ目印を攻撃する
- 膜上皮抗原 抗CD20抗体薬
- 融合遺伝子
- PML-RARA 融合遺伝子:急性前骨髄性白血病
- BCR-ABL 融合遺伝子:慢性骨髄性白血病 BCR-ABL阻害薬
- ALK 融合遺伝子:肺癌 ALK阻害薬
- ALK キナーゼ阻害薬(ALK阻害薬、ALK-TKI)
- ROS1 融合遺伝子:肺癌 ROS1 阻害薬
- RET 融合遺伝子:肺癌 RET阻害薬