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パーキンソン病

パーキンソン病

パーキンソン病とは

中脳の 黒質ドパミン神経 が進行性に変性・脱落し、線条体の ドパミンが欠乏 することで発症する神経変性疾患。運動症状(4大症状)と非運動症状を伴う。病理学的には神経細胞内に レビー小体(α-シヌクレインの凝集体)が出現する。

病態:ドパミンとアセチルコリンのバランス

💡
正常では、線条体において ドパミン(運動抑制)と アセチルコリン(ACh)(運動促進)がバランスを保っている。パーキンソン病では:
  • ドパミン↓ → 運動抑制が低下
  • 相対的に ACh優位 → 運動促進が過剰
  • → 振戦・筋固縮などの運動症状が出現
薬物治療はこのバランスを回復させることが目的:
  • ドパミンを補充・増強 する薬
  • AChを抑制 する薬

4大運動症状

症状内容
安静時振戦安静時に手指が振える(pill-rolling tremor:丸薬を丸めるような動き)。動作時には軽減
筋固縮(筋強剛)筋肉の緊張↑。他動的に動かすと 歯車様固縮(カクカク)または 鉛管様固縮(一様な抵抗)
無動・寡動動作が遅くなる。表情の乏しさ(仮面様顔貌)、小声、小字症
姿勢反射障害バランスを崩したときに立て直しができない。転倒リスクが高い。進行期に出現

その他の症状

  • 運動症状:小刻み歩行、すくみ足、突進現象、姿勢異常(前屈姿勢)
  • 非運動症状:便秘、起立性低血圧、排尿障害、うつ症状、認知機能低下、REM睡眠行動障害、嵅覚障害

薬物治療

ドパミン補充・増強系

薬効群代表薬作用機序・特徴
L-ドパ(レボドパ) レボドパ製剤 ネオドパストン® マドパー® メネシット®ドパミンの前駆体。脳内でドパミンに変換。最も有効な治療薬。通常DCI(カルビドパ等)と合剤で使用。長期使用で wearing-offon-off現象ジスキネジア が問題 ドパ脱炭酸酵素阻害薬(芳香性 L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)阻害薬, DCI)
ドパミン受容体作動薬 ドパミン作動薬(ドパミンアゴニスト)<非麦角系> ドパミン作動薬(ドパミンアゴニスト)<麦角系> プラミペキソール ロピニロール ロチゴチンドパミン受容体(D₂受容体)を直接刺激。L-ドパより半減期が長く wearing-off の改善に有用。若年発症例では初期治療にも使用
MAO-B阻害薬 セレギリン ラサギリン サフィナミドドパミンを分解するMAO-Bを阻害 → 脳内ドパミン濃度↑。L-ドパの作用延長。初期治療や補助的治療に
COMT阻害薬 エンタカポン オピカポンL-ドパの末梢での分解を抑制 → 脳内へのL-ドパ移行量↑。必ずL-ドパと併用。wearing-offの改善
ノルアドレナリン前駆物質 ドロキシドパ脳内でノルアドレナリンに変換。すくみ足・姿勢異常の改善に有用
ドパミン遊離促進薬 アマンタジン(シンメトレル®)NMDA受容体拮抗+ドパミン遊離促進。ジスキネジアの改善にも使用

ACh抑制系

薬効群代表薬作用機序・特徴
抗コリン薬 トリヘキシフェニジル ビペリデン線条体のACh受容体を阻害し、相対的ACh優位を是正。振戦に有効。抗コリン作用による副作用(口渇・便秘・排尿障害・認知機能低下)に注意。高齢者・認知症には原則禁忌

L-ドパ長期使用による問題点

現象内容
wearing-off現象薬効が次の服薬まで持たなくなる。服薬前に症状が再燃。対策:服薬回数増・COMT阻害薬・MAO-B阻害薬で作用延長
on-off現象服薬時間と無関係に、突然動けなくなる(off)↔動ける(on)を繰り返す
ジスキネジア薬効が最大の時に不随意運動(くねくねした動き)が出現。L-ドパの過剰を示唆

治療薬の作用点まとめ

💡
ドパミン神経伝達の流れと薬剤の作用点
  • L-ドパ → 脳内でドパミンに変換(原料補充)
  • DCI(カルビドパ・ベンセラジド) → 末梢でのL-ドパ→ドパミン変換を抑制(脳内移行量↑)
  • COMT阻害薬 → 末梢でのL-ドパ分解を抑制(脳内移行量↑)
  • MAO-B阻害薬 → 脳内でのドパミン分解を抑制(ドパミン濃度維持)
  • DA受容体作動薬 → D₂受容体を直接刺激
  • 抗コリン薬 → 相対的ACh優位を是正

看護のポイント(観察事項)

🩺
  • 服薬時間の厳守:L-ドパは半減期が短く、服薬時間のズレが wearing-off を悪化させる
  • on-off現象・ジスキネジアの観察:薬効の変動・不随意運動の有無を記録
  • 転倒予防:姿勢反射障害・すくみ足による転倒リスク → 環境整備・歩行補助具の検討
  • 嘔吐・食欲不振の観察:L-ドパの消化器副作用(特に導入時)
  • 起立性低血圧の観察:DA受容体作動薬等で常見。立ちくらみ・めまいの有無
  • 精神症状の観察:幻覚(特に幻視)・妄想・衝動制御障害(DA受容体作動薬で多い)
  • 便秘の観察:自律神経障害+抗コリン薬の影響
  • 崥下機能の評価:誤嚥性肺炎予防のため、食事形態・姿勢の工夫
  • 患者教育:自己判断での休薬禁止(急な中止で 悪性症候群 のリスク)、食事とのタイミング(高蛋白食でL-ドパの吸収↓)

パーキンソン病とパーキンソン症候群

💡
パーキンソン病(Parkinson's disease: PD)
  • 中脳黒質のドパミン神経の進行性変性・脱落による 原発性(特発性) の神経変性疾患
  • 病理学的に レビー小体(α-シヌクレインの凝集体)が出現
  • 原因不明(特発性)
  • 指定難病(指定難病6)
⚠️
パーキンソン症候群(Parkinsonism)
  • パーキンソン病と同様の運動症状(振戦・固縮・無動・姿勢反射障害)を呈する 症候群の総称
  • パーキンソン病以外の原因でも起こる
分類内容
パーキンソン病(PD)原発性(特発性)。黒質ドパミン神経の変性・脱落。レビー小体が出現。L-ドパが有効
薬剤性パーキンソニズム抗精神病薬(D₂受容体遮断薬)・制吐薬(メトクロプラミド・ドンペリドン)などが原因。原因薬の中止・変更 が基本。急性期にはビペリデン(タスモリン®注)で対応することも
血管性パーキンソニズム脳血管障害(脳梗塞等)による。下半身優位の症状が多い。L-ドパの効果が乏しい
レビー小体型認知症(DLB)レビー小体が大脳皮質にも広範に出現。認知機能の変動・幻視・パーキンソニズムを伴う。抗精神病薬への過敏性がある
進行性核上性麻痺(PSP)垂直方向の眼球運動障害・姿勢不安定・転倒。L-ドパの効果が乏しい
多系統萎縮症(MSA)パーキンソニズム+小脳失調+自律神経障害。L-ドパの効果が乏しいことが多い
🩺

看護のポイント:

  • 薬剤性パーキンソニズム は原因薬の中止・変更が基本(L-ドパでの治療は推奨されない)
  • パーキンソン病とパーキンソン症候群では L-ドパの反応性が異なる → 鞍別診断の手がかり
  • DLBでは 抗精神病薬への過敏性 があるため、少量でも重篤な錐体外路症状をきたすことがある
  • 薬剤性パーキンソニズムの原因となる薬剤:抗精神病薬、メトクロプラミド(プリンペラン)、ドンペリドン(ナウゼリン)、スルピリド(ドグマチール)など