転倒

転倒

薬剤の影響

高齢者における薬剤性転倒リスク

薬剤の影響
FAERSデータベースを用いた研究で、神経学的薬剤が、薬剤による転倒の発生率と関連していた
  • 神経学的薬剤
    • 抗精神病薬(ROR 4.54; 95%CI 3.65-5.65)
    • 抗うつ薬 (ROR 2.80; 95% CI 2.55-3.08)
    • 抗パーキンソン病薬 (ROR 3.79; 95%CI 3.79-4.44))
    • 中枢神経系薬剤 (ROR 2.92; 95%CI 2.55-3.35)
    • 抗けいれん薬 (ROR 2.99; 95%CI 2.56-3.50)
    • 催眠鎮静薬 (ROR 3.81; 95%CI 3.17-4.57)
  • 循環系
    • 降圧薬 (ROR 2.88; 95%CI 2.37-3.51)
  • 消化器系
  • 運動系

精神・神経系に作用する薬

薬剤の影響から、過鎮静・筋弛緩作用などを介して転倒リスクがあることに注意が必要
ベンゾジアゼピン系薬
筋弛緩作用もあり、転倒リスクがあるため注意が必要
薬剤性を疑っても、急に中止してはいけない: 漸減が必要な薬剤
非ベンゾジアゼピン系薬 Z薬
 
ベンゾジアゼピン系薬よりも安全とされている。
受容体の選択性が高いため筋弛緩作用が少ないが、全くないわけではない高齢者では注意が必要。
  • :転倒リスクは極めて低い
オレキシン受容体拮抗薬
従来の睡眠薬と比較して、依存性や転倒の安全性が高いとされている。
しかし、作用時間が長いため持ち越し効果のリスクがあり、転倒については、他の睡眠薬と同様に、注意が必要と考える
メラトニン受容体作動薬
は、転倒リスクが低い可能性がある。
OR 1.40
転倒リスクが増加した
  • スボレキサント:OR 2.61, (95% CI 1.29-5.28)
  • 非ベンゾジアゼピン系:OR 2.49 (95% CI: 1.73-3.59)
  • ベンゾジアゼピン系:OR 1.65 (95% CI: 1.16-2.34)
転倒リスクは増加しなかった
  • ラメルテオン (OR: 1.40, 95% CI: 0.60-3.16)
  • kampo (OR: 1.55, 95% CI: 0.75-3.19)
抗うつ薬
 
抗コリン作用の面で、SSRI は、TCA よりも安全と認識されているが、
転倒に関しては、同様にリスクがあるため注意
    • OR 2.13
      長時間作用型ベンゾジアゼピン系薬
      • OR 2.16 (95% CI 1.85–2.52)
      TCA
      • OR 2.13 (95% CI 1.62–2.83)
      処方期間が長い方がリスクが高かった
      • ≥49 days for long-acting BZDs
      • ≥ 56 days for TCAs)
      HR 2.0-2.5
      • 抗うつ薬vs抗精神病薬
        • 骨折リスク:抗うつ薬の方がリスクが高い(調整ハザード比 (HR) = 1.35, 95% CI: 1.10–1.66)
        • 転倒リスク:抗うつ薬使用者で高かったが、統計的に有意ではなかった (HR = 1.12, 95% CI: 0.97–1.29)
      • 抗うつ薬
        • 転倒リスク
          • TCA 2.0–2.5 (非常に高い)
          • SSRI 1.7–2.0 (高い)
          • ミルタザピン 1.5–1.8 (中程度)
          • トラゾドン 1.3–1.6 (低〜中程度)
        • 骨折リスク
          • TCA 1.8–2.2 (高い)
          • SSRI 1.7–2.0 (高い)
          • ミルタザピン 1.3–1.6 (低〜中程度)
          • トラゾドン 1.2–1.5 (低〜中程度)
  • :リスクは低い
認知症治療薬
失神リスクを低減するために:
機序:コリン作動性作用により迷走神経緊張を亢進させ、心拍数を低下させるため、失神リスクが増加する
対策:心血管疾患を持つ人に対して、使用の可否を慎重に判断
    • ドパミンD2受容体遮断作用により錐体外路症状を呈する可能性があること、受容体遮断による過鎮静のため、転倒リスクを増加させる可能性がある
    • アドレナリンα受容体とヒスタミン受容体の遮断作用を持つ薬は、起立性低血圧や過鎮静が起こるため、転倒リスクを増大させる可能性がある
OR 1.54
抗精神病薬:ORs 1.54 [95% CI 1.28-1.85]
転倒リスク: 定型>非定型;高用量・累積用量の増加;治療期間の長期化
 
 

循環器系に作用する薬

心血管系における薬の影響は、起立性低血圧や失神などを起こす可能性があり、転倒リスクがあることに注意した上で使用している。
ジギタリス製剤
 
OR 1.60, OR 2.06
ジギタリス OR 1.60 (1.08, 2.36)
ジゴキシン OR 2.06 (1.56, 2.74)
OR 1.22
Ⅰa群抗不整脈薬
 

転倒リスクを増加させないと考えられる薬

メタアナリシスなどの結果から、転倒リスクを増加するリスクは低いと判断できる。しかし、服用している患者は、疼痛が原因で身体動作が不安定である可能性があるため、転倒について注意は必要であることには違いない。
オピオイド
OR, 0.96
麻薬:OR, 0.96 (95% CrI, 0.78-1.18)
OR 0.97
麻薬:OR 0.97 (0.78-1.20)
非麻薬性鎮痛薬
OR 1.09
非麻薬性鎮痛薬:OR 1.09 (0.88-1.34)
NSAIDs
OR 1.16
NSAIDs:OR 1.16 (0.97-1.38)
アスピリン
OR 1.12
アスピリン:OR 1.12 (0.80-1.57)
 

薬効群

転倒リスク指標

 

参考資料)

 

転倒時に注意が必要な薬

転倒した場合、薬剤の影響に注意が必要なもの

易出血

骨粗鬆症

 
 

転倒時の骨折を防ぐための治療

骨粗鬆症

 
基本的な注意事項:用量変更に注意が必要な薬があります。その場合、薬剤性を疑っても、急に中止してはいけません。